ネコふんじゃった 36)生まれたときから、ずっと名盤 このアルバムを最初に聴いたのは高校二年生の冬、友だちのY君の家だった。部屋の隅では、石油ストーブが燃えていた。ちょっとお腹が減ったので、Y君がゆで卵をつくってくれた。コーヒーを淹れて準備完了。レコードに針を下ろす、一曲目の「愛のゆくえ」... 2021.03.16 ネコふんじゃった
ネコふんじゃった 64)世界でいちばん好きな曲 古今東西、あらゆるジャンルのなかでいちばん好きな曲は何か。ベートーヴェンの『英雄』、ラヴェルの「亡き王女のためのパヴァーヌ」といったところが、すぐに思い浮かぶが、今日の気分としては、カーペンターズの「遥かなる影」と答えたい。 い... 2021.02.20 ネコふんじゃった
ネコふんじゃった 63)たまには現代曲を聴いてみる このCDを買ったのは、キース・ジャレット(ピアノ)とギドン・クレーメル(ヴァイオリン)という気になるミュージシャンが共演しているから。しかし聴き進むうちに、演奏者もさることながら、これらの作品の作者に大きな魅力をおぼえはじめていた。 ... 2021.02.01 ネコふんじゃった
ネコふんじゃった 62)深夜のラジオから流れてきた「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」 中学生のころ、ラジオを聞きながら勉強するのが習慣だった。当然、勉強にはあまり身が入らず、ラジオの方が主だった。リクエストのはがきなんかも出していた。地元の民放だと、かなりの確率で読まれた。 二年生の冬だった。炬燵に入って、いつも... 2020.12.16 ネコふんじゃった
ネコふんじゃった 61)今年は七十回目の誕生日 ジョン・レノンが亡くなったとき、ぼくは大学卒業を控えた二十一歳だった。彼の晩年の作品に「グロウ・オールド・ウィズ・ミー」という曲がある。ぼくたちはジョンの死とともに歳をとってきた世代である。 あれから三十年。ぼくは結婚し、二人の... 2020.11.09 ネコふんじゃった
ネコふんじゃった 60)北京空港で聴いたラヴェル 仕事で中国へ行ってきた。フレンドリーで温かな人たち。一週間ほどの滞在を終えて、帰国の途につくときには名残り惜しさをおぼえた。そんな気持ちを汲むかのように、北京空港は発着の飛行機で混雑し、離陸までにはあと二十分ほどかかるというアナウンス。... 2020.10.08 ネコふんじゃった
ネコふんじゃった 59)エイモス・ギャレットのギターにしびれる マリア・マルダーが夫であったジェフ・マルダーとのコンビを解消し、ソロとなっての第一作。レニー・ワロンカーとジョー・ボイドという敏腕プロデューサーのもと、集められたミュージシャンの顔ぶれがすごい。ジム・ケルトナー、クリス・パーカー... 2020.09.08 ネコふんじゃった
ネコふんじゃった 58)みずみずしいガット・ギターの響き ときは七十年代後半、世に「フュージョン」「クロスオーバー」と呼ばれる音楽の全盛期。ガット・ギターを抱えて颯爽と登場した青年がいた。それまでガット・ギター(ナイロン弦で、基本的に指弾き)といえば、クラシックかせいぜいボサ・ノヴァで使われる... 2020.08.12 ネコふんじゃった
ネコふんじゃった 57)ボサ・ノヴァの女王、デビュー作 ときは1963年、かの名作『ゲッツ・ジルベルト』の録音時。スタジオに遊びに来ていた妻に、夫のジョアンが「おまえも一曲歌ってみないか」と声をかけたのが、そもそものはじまりであった。いくらジョアン・ジルベルトの妻とはいえ、素人に一曲... 2020.07.09 ネコふんじゃった
ネコふんじゃった 56 仲間たちの死を乗り越えて ロックという音楽の特徴の一つが、スピード感にあることは間違いない。若さとエネルギーに溢れたテンポとリズムがもたらす爽快さは、クラシックやジャズでは得られない魅力だ。これはロック・ミュージシャンの生き方にもつながっている。生から死へと疾走... 2020.07.07 ネコふんじゃった
ネコふんじゃった 55 こんなぼくですけど ジャケットを思い浮かべるだけで、幸せな気分になれるレコードがある。このアルバムなどは、さしずめその最たるもの。ちょっと太目のお兄さんが、タキシードにけったいな蝶ネクタイをしめて、そろそろ床屋へ行った方がよさそうな髪には軽い寝癖が。いった... 2020.05.10 ネコふんじゃった
ネコふんじゃった 54 それから先のことは 昨年、彼が亡くなったあと、なんとなく聴きたくなったのが「シンガプーラ」だった。熱い風かき回す、羽ひろげる扇風機、西、東、血が混じる、あの子の目に魅せられた……。その「シンカーブラ」を収録した本アルバムは、一九七六年にアラバマ州はシェイフ... 2020.04.16 ネコふんじゃった
ネコふんじゃった 53 最高にかっこいいロック・アルバム フランク・ザッパというと奇人変人のイメージが先行して、とくに日本では、彼の音楽が正当に評価されていない気がする。しかしアルバムを聴いてもらえばわかるとおり、非常に高い音楽性をもった、天才的なミュージシャンである。 あまりに才能が... 2020.03.24 ネコふんじゃった
ネコふんじゃった 52 スティルス、才気爆発の一作 かつてのバンド仲間だったニール・ヤングと、なにかにつけて比較されることの多かったスティーブン・スティルス。ぼくの贔屓はニール・ヤングだったけれど、才能があるのはスティルスだと思っていた。ギターもキーボードも上手いし、ハスキーな独特の声で... 2020.02.11 ネコふんじゃった
ネコふんじゃった 51 生涯に出会った最高のロックバンド 最初にザ・バンドの音楽に触れたのは、やはりボブ・ディランがらみだった。高校一年生の夏、ディランとザ・バンドのライブ・アルバムが発売になる。二枚組みのアルバムには、ザ・バンドを従えた力強いディランの歌と、それ以上に魅力的なザ・バン... 2020.01.26 ネコふんじゃった
ネコふんじゃった 50 はじめて買ったボブ・ディランのレコード ぼくたちが中学生のとき、「学生街の喫茶店」という曲がヒットしていた。歌っていたのはガロという名前の三人組。歌詞のなかに「片隅で聞いていたボブ・ディラン」という一節が出てくる。そのころから「ボブ・ディラン」という名前が気になってい... 2020.01.10 ネコふんじゃった
ネコふんじゃった 49 一瞬のアイコン 高校を卒業するまで住んでいた街には、レコード屋が二軒あった。中学二年生の秋、これら二つの店に、突如として巨大なポスターが現れた。しかも店内のあちこちに、中吊り広告のように何枚も吊るしてある。それがこのT・レックス、『スライダー』のポスタ... 2019.12.21 ネコふんじゃった
ネコふんじゃった 48 こんなんジャズじゃない、と言われたものだけど ジャズを聴きはじめたころは、CTIというレーベルをなんとなく馬鹿にしていた。ブルーノートなどの由緒正しいジャズ・レーベルにくらべると、ちょっと軽いというか、ストリングスを多用したサウンドをはじめ、ジャケットも含めてムードミュージ... 2019.11.26 ネコふんじゃった
ネコふんじゃった 47 大地の声に酔う ミルトン・ナシメントの名前をはじめて目にしたのは、ムーンライダーズの『ヌーヴェル・ヴァーグ』というアルバムに彼の曲が入っていたから。同じころ、ウェイン・ショーターの『ネイティブ・ダンサー』を聴いて、このブラジルのミュージシャンに興味を抱... 2019.10.16 ネコふんじゃった
ネコふんじゃった 46 アンビエントな夜のために ブライアン・イーノが「アンビエント・ミュージック」というジャンルを作り出さなければ、この手の音楽との出会いはずっと遅れていただろう。いや、まったく出会わなかった可能性もある。そう考えると、イーノ先生に感謝です。 作者のハロル... 2019.08.22 ネコふんじゃった
ネコふんじゃった 45 突然の死を悼んで その日、ぼくは仕事でパリにいた。朝、ホテルの部屋でテレビをつけると、白いシーツでくるまれた遺体が、ヘリコプターから搬入されるシーンが映った。すぐに画面はジャクソン・ファイブ時代のマイケル少年に切り替わる。さらに「今夜はドント・ストップ」... 2019.07.31 ネコふんじゃった
ネコふんじゃった 44 気だるい夏の昼下がりに 七十年代、八十年代を通して、ブラジルのコンテンポラリー・ミュージックを牽引していくガル・コスタとカエターノ・ヴェローゾ。これは二人にとってのデビュー・アルバムにして、一期一会のデュエット・アルバム。録音は一九六七年、ガルは二十二歳、カエ... 2019.07.13 ネコふんじゃった
ネコふんじゃった 43みんなメロウでシルキーだったころ あのころ(というのは、ぼくが大学生だった七〇年代後半)、AORという呼び方はなかった。ソフト・アンド・メロウとかシティポップスなどと呼ばれていた。ちなみにAORは「アダルト・オリエンテッド・ロック」の略。ロックにジャズやソウルの... 2019.05.23 ネコふんじゃった
ネコふんじゃった 42 あのころ彼はスゴかった ぼくの高校時代は、一九七四年から七六年になるのだが、この三年間に、スティーヴィー・ワンダーは『インナーヴィジョンズ』『ファースト・フィナーレ』『キー・オブ・ライフ』という三枚のアルバムを作り、いずれもグラミー賞を獲得している。ぼ... 2019.04.21 ネコふんじゃった
ネコふんじゃった 41 素直に聴けなかったプログレッシブロック 高校生のころ、大人になっても絶対に真似するまいと思ったのは、ゴルフとプログレ系のファッションだった。パッチワークをあてたジーンズにチェックのシャツという、ニール・ヤングのファッションを最高と思っていた当時のぼくには、彼らのセンスは許しが... 2019.03.31 ネコふんじゃった
ネコふんじゃった 40 春だ、ジャヴァンを聴こう! 現在も活躍するブラジルのミュージシャン、ジャヴァンがアメリカのメジャー・レーベルに移籍しての第一作は、日本でのデビュー作でもある。発表は一九八二年、一曲目の「サムライ」はスティーヴィー・ワンダーがハーモニカで参加しているという話題性もあ... 2019.02.12 ネコふんじゃった
ネコふんじゃった 39 お行儀のいいコルトレーンを聴く 雪雲が低く垂れ込めた、寒い冬の日の午後、薄暗い部屋で本を読んでいると、どこからともなく、寂しくも懐かしいピアノの音色が聴こえてくる。エリントンの弾く「イン・ア・センチメンタル・ムード」のイントロだ。つぎはテナーサックス。一つ一つの音を慈... 2019.01.19 ネコふんじゃった
ネコふんじゃった 38 タルコフスキーとバッハ バッハの宗教曲といえば、マタイ、ヨハネの両受難曲にロ短調ミサ曲、クリスマス・オラトリオと傑作揃いだが、どれか一つということになれば、作品の規模からいっても内容からいっても、やはりマタイ受難曲ということになるだろう。 ぼくがこの作... 2018.12.21 ネコふんじゃった
ネコふんじゃった 37 大好きな『大地の歌』だけれど 今年のサイトウ・キネン・オーケストラのメイン・プログラムは、マーラーの交響曲第一番『巨人』だったそうだ。コンサートを聴きに行った友だちからその話を聞いて、このところまたマーラーを聴いている。もう二十年近く前になるだろうか、ずいぶん入れ揚げ... 2018.11.17 ネコふんじゃった
ネコふんじゃった 36 生まれたときから、ずっと名盤 このアルバムを最初に聴いたのは高校二年生の冬、友だちのY君の家だった。部屋の隅では、石油ストーブが燃えていた。ちょっとお腹が減ったので、Y君がゆで卵をつくってくれた。コーヒーを淹れて準備完了。レコードに針を下ろす、一曲目の「愛のゆくえ」が... 2018.10.09 ネコふんじゃった
ネコふんじゃった 35 アイズレーが歩んできたロング&ワインディングな道 最初に一言。彼らの場合、ジャケットには目をつぶらなければならない。どのアルバムも、ド派手なステージ衣装に身を固めた六人のあまり美しくない男たちが、「8時だヨ!全員集合」という感じで写っている。同じパターンが「これでもか」というくらいつづく... 2018.09.12 ネコふんじゃった
ネコふんじゃった 34 水割りの味とトム・ウェイツ 若いころは、ウィスキーの水割りを美味しいと思ったことはなかった。ああいうのは結婚式などで、時間つぶしに飲むものだった。最近は、焼酎でもウィスキーでも、お湯や水で薄く割ったものを好んで飲んでいる。歳のせいでしょうかねえ。 水割りの味をお... 2018.08.12 ネコふんじゃった
ネコふんじゃった 33 いつもクールなデスモンドのサックス ポール・デスモンドというと、条件反射的に「テイク・ファイブ」の人ということになってしまうのは、致し方ないことかもしれない。彼の名前は知らなくても、あのメロディを耳にすれば、大半の人が「ああ、この曲か」となるはずである。ちなみに初演は、デイ... 2018.07.29 ネコふんじゃった
ネコふんじゃった 32 中学生がもらった一枚のはがき 中学三年生の夏休みに、街のレコード屋さんから一枚のはがきが届いた。裏側に写真が印刷されていて、ストリート・ギャングみたいな柄の悪いお兄さんたちがこっちを睨んでいる。なんなんだ、この人たちは。 それはレコード会社が作ったプロモーション用... 2018.05.30 ネコふんじゃった
ネコふんじゃった 31 クラシック音楽との出会い 中学生のころは、よくラジオを聴きながら勉強していた。そこで耳にして、好きになった曲もたくさんある。デオダードの「ラプソディ・イン・ブルー」も、そんな曲の一つだ。 原曲はガーシュインのピアノ協奏曲。夢見るような美しいメロディが気に入った... 2018.05.14 ネコふんじゃった
ネコふんじゃった 30 二人は別れてしまったけれど イギリスのフォーク・ロック・バンド、フェアポート・コンヴェンションの中心メンバーだったリチャード・トンプソンが、バンドを脱退した後に奥さんのリンダと結成した夫婦デュオの、これはラスト・アルバムにして最高傑作。 リチャードの個性的なギタ... 2018.04.08 ネコふんじゃった
ネコふんじゃった 29 ヴァン・モリソンに駄作はない たぶん、ないと思う。そういうことにしておこう。駄作はない、と断言できないのは、三十枚以上出ている彼のアルバムを、すべて聴いたわけではないから。でも、半分くらいは聴いている。それで言えることは、どのアルバムも、やりたいこと、歌いたいことがは... 2018.03.19 ネコふんじゃった
ネコふんじゃった 28 ジョン・セバスチャンは、たんぽぽみたいなミュージシャンです 今年は一月が暖かく、このまま春になったのではありがたみがないな、と思っていたら、二月になってようやく寒くなってくれた。北国の人には叱られるかもしれないけれど、やっぱり冬はきちんと寒い方がいい。こちらは立春を過ぎると、風は冷たくても日差しは... 2018.02.19 ネコふんじゃった
ネコふんじゃった 27 冬の寒い朝に聴きたい、透明感あふれるデュオ ここ福岡では、雪が積もることは一年に一度あるかないか、氷が張るなんて事態は、もう何年も記憶にありません。やはり温暖化の影響でしょうか。ぼくが小学生のころには、郷里の四国でも、冬になるとよく氷が張っていました。池や水溜りに張った氷を割りなが... 2018.01.17 ネコふんじゃった
ネコふんじゃった 26 あのころは毎日のように、ビリーの歌が聞こえていた あのころというのは、一九七七年から七八年ごろのこと。たとえば友だちの下宿やアパートを訪れる。するとFMラジオか何かから、『はぐれ刑事純情派』みたいな口笛が流れてくる。そしてはじまる「ストレンジャー」。もういい加減にしてくれ! と思うころに... 2017.12.04 ネコふんじゃった