97)ポールがやって来た、ヤァ、ヤァ、ヤァ

ネコふんじゃった
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 十一年ぶりの来日である。福岡公演は二十年ぶり。その二十年前の公演は、ぼくも観にいった。ほぼ全曲一緒に歌った(歌えてしまった)自分に呆れつつ、あらためてポールとビートルズの偉大さを実感した。七十一歳になったポール。福岡での第一声は「カエッテキタバイ!」だったらしい。いいなあ。さらに「ニホンゴ、ガンバリマス。バッテン、エイゴノホウガ、ウマカトヨ」って、あんたはお笑い芸人か。

 ぼくがロックを聴きはじめたのは中学生のころ。ビートルズは解散し、各自がソロで活動しはじめていた。ポールの作品も、やはりその時代のものに愛着がある。今回取り上げた『ウィングス・ワイルド・ライフ』は、一九七一年のリリース。ウィングス名義の一作目にあたる。このアルバム、ポールはたった三日で録音したらしい。いかにも荒削りで、まだデモ・テープの段階と言っていい。しかし、この性急さと強引さが、まさにポールなのだ。完成度よりも、勢いやインスピレーションを優先したのだろう。その結果、原石の美しさを湛えたアルバムが生まれた。

 いまでもときどき、ぼくはこのアルバムが聴きたくなる。ポールのいろんな作品を聴いたあとで、取り出してみたくなるレコードかもしれない。ザックリとした音は、デジタルな音に慣れた耳で聴いても新鮮だ。きっとポールのなかでも、いろんなアイデアが溢れていたのだろう。冒頭の三曲で聞かれるシャープなサウンドには、彼の過激な面が出ている。後半は、いかにもポールらしい、美しいメロディの曲がつづく。(2013年11月)