78)「街」を感じさせるアルバム

ネコふんじゃった
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 学生のころ、休みの日の楽しみは、レコード店と古本屋をまわることだった。けっして資金は潤沢ではない。だから安いカット・アウトの輸入盤や古本を漁る。とくに古本屋は掘り出し物を求めて何軒も歩きまわる。そして一日の終わり、喫茶店でコーヒーを飲みながら、買ったばかりの本やレコードを眺めるのは、いかにも至福のひとときだった。

 月日は流れ、街へ出かけることはめっきり少なくなった。最近は何か用でもないかぎり、好んで出かけることはまずない。日本の都市が、家電量販店やドラッグストアなどに象徴される、面白味のないものになってしまったのが一番の理由だろう。本もCDも、いまはインターネットで買うことが多い。

 ザ・スタイル・カウンシルの『カフェ・ブリュ』は、まさに「街」を感じさせるアルバムだ。何よりジャケットが街そのものではないか。パリあたりのオープンカフェだろうか。青のモノトーンが洒落ている。右側、白いトレンチ・コートにジーンズのポール・ウェラーは、颯爽としていてかっこいい。いかにも雨が上がるのを待ち構えて、いま繰り出したというおもむき。フォーカスの甘い写真には躍動感がある。

 ジャムをやめたウェラーが、キーボードのミック・タルボットと結成したグループ。ロックにとらわれず、ジャズやソウルなど、自分たちの好きな音楽を自由に演奏する、というのがコンセプト。とても風通しがいい。聴いているうちに、カジュアルな服で街に出かけたくなる。(2012年4月)