6 トム・ジョビンは白湯の味?

ネコふんじゃった
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 一年半ほど前から気功の教室に通っている。ぼくが教わっている先生のモットーは、「無理をしない、がんばらない」という、間違っても校訓などにはならないような代物だ。そんなところも自分には合っていると思うので、案外長つづきしそうな気がしている。
 あるとき師の曰く、ストレスなどで身体が緊張していると、繊細で微妙な味がわからなくなる。甘い方へも辛い方へも、味付けが濃くなっていく。ファストフードやファミリーレストランの食べ物みたいな、どぎついものを好むようになる。いまの若い子がマヨネーズ味などを好むのは、味覚が鈍っているせいではないか。リラックスを心がけ、白湯を味わうくらいの余裕が必要である、と。なるほど。
 まさに白湯のようなアルバムである。ラップやヒップホップなど、今風の過激な音に慣れた耳には物足りなく聞こえるかもしれない。イージーリスニングととらえる向きもあるだろう。たしかに薄味ではあるが、水っぽくない。塩や醤油は控えめ、でも昆布や鰹の出汁がしっかり効いている。だから何回聴いても飽きない。聴けば聴くほどに、味わい深い。こういう音楽を聴いて、しみじみ「いいなあ」と感じられる時間を、日々の暮らしのなかに持ちたいものである。
 キリンが波打ち際(実際は草原だと思う)を駆けている写真も素敵だ。このジャケット、国内盤はバックの色が赤なのに、なぜか輸入盤は緑。ぼくは緑の方が神秘的で好きですが、皆さんはいかがですか? (2006年6月)