88)内省的なフォーク・ソウル

ネコふんじゃった
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テリー・キャリアーの音楽を一言で表現するのは難しい。一応、ジャンル的にはソウル・ミュージックになるのだろうが、アコースティック・ギターを手にうたう彼のスタイルはフォーキーでもある。やはり七十年代初めに出てきたダニー・ハサウェイやロバータ・フラックと同じように、それまでのソウル・ミュージックにはない新しさを感じさせた。そう言えば「ニュー・ソウル」なんて言葉もあったなあ。

ソングライターとしてのキャリアは古い人だが、一般的に知られるようになったのは、このカデット盤からだろう。「ときどき雨」というアルバム・タイトルも、ジャケット・デザインもいい。こういうのはCDではなく、やはり十二インチ盤で持っておきたい。もちろん中身も素晴らしい。短い曲の断片をはさみながら、全体がコンセプチュアルに構成されている。そして何より、このアルバムには「オーディナリー・ジョー」という超名曲が入っているのだ。まさに心ときめく一曲。春の雨が降る街に、薄手のレインコートを着て飛び出したくなる。

次作の『ファット・カラー・イズ・ラヴ』も、ジャケットともども名盤。よりジャズっぽいアレンジがほどこされている。この二枚は手に入りやすく、おすすめ。一時期、音楽シーンから退くが、九十年代になって復活。その後は順調にアルバムをリリースしていた。残念なことに、去年の十月に六十七歳で亡くなった。日本ではあまり知られていない人だと思うが、ぜひ一人でも多くの人に聴いてもらいたい。(2010年2月)