80)奇蹟のデビュー・アルバム

ネコふんじゃった
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 ビネガー・ジョーなどのロック・バンドでソウルフルな咽喉を聴かせていたロバート・パーマーが、アイランド・レーベルに移籍してのソロ第一作にして最高作である。これを「奇蹟」と呼ぶのは、参加しているミュージシャンの顔ぶれの一期一会感と、さらに彼らが、持ち味を発揮した名演を繰り広げているからである。

 一九七四年のアルバムだが、国内盤のリリースは一九八六年だった。クレジットはないものの、リトル・フィートのローウェル・ジョージやスタッフのメンバーが参加していることは情報として入っていた。ローウェルのスライド・ギターはすぐにわかるけれど、スタッフのメンバーの活躍は期待したほどではない。リチャード・ティらしいピアノが何曲かで聴かれるくらい。それよりもミーターズの面々が弾き出す、ニューオーリンズっぽいリズムに胸躍る。

 一曲目はリトル・フィートの「セイリング・シューズ」、自作の「ヘイ・ジュリア」を挟んで、アラン・トゥーサンのタイトル曲まで、メドレーで演奏される冒頭の三曲が、このアルバムのハイライト。残りの二曲も含め、A面は完璧だ。B面はちょっと冗長なところもあるけれど、A面の素晴らしさは、それを補って余りある。

 お洒落なジャケットのシティ・ソウル路線のアルバムが、さらに三枚つづいたあとは、突然のご乱心。一作ごとにニューウェイブになったり、テクノになったり、ハードロックになったりと、いささか無節操なパーマー氏だが、何をやっても憎めないあなたが好きでした。(2012年6月)