95)数々のカバーを生んだ名盤

ネコふんじゃった
この記事は約2分で読めます。

 ミュージシャンズ・ミュージシャンという言い方をすることがある。多くのミュージシャンに影響を与え、彼らから敬愛されるミュージシャンという意味だろう。今回ご紹介するJJ・ケイルは、まさにそんな人だ。ぼくが彼の名前を最初に耳にしたのも、エリック・クラプトンによる「アフター・ミッドナイト」や「コカイン」のカバーを通してだった。

 1938年、オクラホマ州タルサの生まれで、つい最近まで活躍していたが、惜しくも今年の七月に亡くなってしまった。享年七十四歳。このデビュー・アルバムは1971年に発表されたもの。遅いデビューとはいえ、まだ三十歳そこそこ。それにしてはずいぶん枯れている。ブルースを基調に、軽快なカントリー・タッチが加わる。バックはナッシュビルのセッシュン・ミュージシャンたちのようだ。ホーンの入っているアップ・テンポの曲がアクセントになっている。「アフター・ミッドナイト」をはじめ、「コール・ミー・ザ・ブリーズ」など名曲が目白押し。とりわけ「マグノリア」のディープな甘さは格別だ。

 四十年以上にわたってアルバムを出しつづけた人だけれど、音楽のスタイルはほとんど変わらない。シンプルで音の少ないアレンジ。独特なトーンのギターと、渋くてクールな歌声は、とんがったところがなくて気持ちが和む。

 とにかく地味な人で、いちばん有名なアルバムは2006年のクラプトンとの共作かもしれない。奇抜なことをやっているわけではないので、どのアルバムも安心して聞けます。(2013年9月)