中学三年生の夏休み、ロック好きの友だちの家に遊びに行き、いつものように「何か新しいレコード買った?」とたずねると、「声が独特だから好き嫌いが分かれると思うけど、おれはすごく気に入っているんだ」と言って、彼は一枚のレコードを取り出してきた。一曲目の「トゥルー・ブルー」を耳にした瞬間、ぼくもこのシンガーが好きになった。
ソロとしては四枚目。この時期のロッドは、フェイセズでの活動と並行してソロ活動を行っており、とくに本アルバムには、ロン・ウッドをはじめとしてフェイセズのメンバーが全員参加している。デビュー時からローリング・ストーンズやボブ・ディランの曲を取り上げていたロッドだが、ここではディランの曲に加えて、ジミ・ヘンドリックスやサム・クックの曲をカバーしている。さすがにどれも出来がいい。とりわけエタ・ジェイムズの「アイド・ラザー・ゴー・ブラインド」はオリジナルを上回る名演と言っていいだろう。
このあとフェイセズは解散。本格的なソロ活動に入ったロッドは、トム・ダウドをプロデューサーに迎えて『アトランティック・クロッシング』や『ナイト・オン・ザ・タウン』といった名作を世に送り出していく。一方、盟友のロン・ウッドはストーンズのメンバーとなり現在に至る。もう一人、フェイセズのメンバーだったロニー・レインは、地道にソロ活動をつづけるものの、多発性脊髄硬化症という難病におかされ、友人たちの温かい励ましの甲斐もなく、一九九七年に五十一歳で亡くなった。(2013年10月)