レコードのある風景

レコードのある風景

⑫ザ・スタイル・カウンシル『カフェ・ブリュ』

ぼくが福岡へやって来たのは一九七七年、大学へ入学した年だった。市街電車はまだ走っていた。地下鉄の工事中で、貝塚から天神へ向かう道は混雑がひどかった。  学生時代を思い返し、いちばん愛着のある街は、やはり親不幸通りのあたりだ。当時の親不幸通り...
レコードのある風景

⑪アート・ペッパー『ミート・ザ・リズム・セクション』

いまの若い人たちは、どんなふうにしてジャズを聴きはじめるのだろう。きっとぼくたちのころとくらべて、ずっと自由に、いろんな切り口から新旧のジャズを聴いているのだろうと想像される。  ぼくがジャズを聴きはじめたのは七十年代半ば、そのころはもっと...
レコードのある風景

⑩『メイン・ストリートのならず者』

このアルバムが発売されたのは一九七二年、ぼくが中学二年生のときだった。彼らにとっては、はじめての二枚組だ。発売前から評判の高かったアルバムで、ぼくもできればほしかった。しかし三千円という出費は、中学生にとっては取り返しのつかない額なので、買...
レコードのある風景

⑨『サウンド・オブ・サイレンス』

ロックを意識的に聴きはじめたのは中学一年生のとき。最初に買ったレコードはヴェンチャーズのEP盤だった。「バットマンのテーマ」「蜜の味」などが入っていた。他にもヴェンチャーズのシングルは何枚か買った。入学祝に買ってもらったフォーク・ギターで、...
レコードのある風景

レコードのある風景……⑧『ゴールデン・サークルのオーネット・コールマン

ジャズのレコードを集める楽しみの一つはジャケットにある。ロックやクラシックのアルバムとは明らかにテイストが異なる。  たとえばブルー・ノートのジャケット・デザインの特徴は、まず単色であること。これは低予算による制約だろう。つぎにミュージシャ...
レコードのある風景

レコードのある風景……⑦

⑦『ゴルトベルク変奏曲』  もう二十年くらい前になるだろうか。ある日、突然ピアノに目覚めた。独学でハノンなどの教則本にも取り組んだけれど、なんといっても弾きたかったのはバッハだ。それでゼンオンの『クラヴィーア小曲集』という、いちばん簡単なバ...
レコードのある風景

レコードのある風景……⑥

⑥『ワン・マン・ドッグ』  デビュー当時のジェイムズ・テイラーのかっこよさは、現在の彼からはちょっと想像するのが難しい。音楽的にはブランクもなく、常にクオリティの高い作品を発表しつづけている人だが、どこか神経質そうで、孤独な影をまとった初期...
レコードのある風景

レコードのある風景……⑤

⑤『クール・ストラッティン』  それまでロック一筋だったぼくは、大学に入ってからジャズを聴きはじめた。きっかけはトム・ウェイツの『土曜の夜の恋人』だった気がする。他にも、ポール・サイモン、ジョニ・ミッチェル、ビリー・ジョエルなど、あのころ(...
レコードのある風景

レコードのある風景……④

④『フリーホイーリン』  中学二年生からロックを聴きはじめたぼくは、一年後の秋には、いっぱしのロック少年になっていた。ビートルズのアルバムは五枚くらい手に入れたし、ローリング・ストーンズは二枚組のベスト盤を買ったので、ヒット曲はだいたい頭に...
レコードのある風景

レコードのある風景……③

③『ウェイブ』  海辺の街に生まれ育ったので、子どものころの海水浴の思い出は、いまでも無性に懐かしい。水中メガネをつけて潜ると、眼下を大小様々の魚たちが泳いでいる。沖へ向かって泳いでいくうち、海の底はだんだん深くなって、あるところからすり鉢...
レコードのある風景

レコードのある風景……②

②『カリフォルニア・シャワー』  その年、というのは一九七八年のこと。福岡は史上まれにみる大渇水に見舞われていた。ほぼ一年間にわたって、時間指定断水がつづいた。当時、ぼくは大学二年生で箱崎に下宿していた。遊郭を改築したような下宿は、下水道の...
レコードのある風景

レコードのある風景……①

① アビー・ロード   現在、ビートルズのCDは、イギリス盤が世界共通のフォーマットになっている。すなわち12枚のオリジナル・アルバムにアメリカ編集の『マジカル・ミステリー・ツアー』、シングルをまとめた『パスト・マスターズ』が2枚。全15枚...