こんな絵

ぼくはこんな絵を掛けている……⑦

 どさくさに紛れて、ぼくが描いた絵も一枚紹介しておこう。リビングのピアノの上に掛けてあるこの絵は、おそらくわが家ではいちばん古いもの。結婚したころ、大学院生のぼくは奨学金と塾のアルバイトで細々と暮らしていた。一方、看護師をしていた奥さんは...
こんな絵

ぼくはこんな絵を掛けている……⑥

 前回ご紹介したアボリジニの青年の版画を、3枚並べて額装してみた。小さな絵も、こんなふうに何枚かまとめて額に入れると、それなりにインパクトのある作品になる。組み合わせや配列を考えたり、額縁を選んだりするのは、アレンジャーやプロデューサーと...
ぼく自身のための広告

ぼく自身のための広告(34)

34 フィル・スペクターの10曲  お待たせしました。お待ちになっていないかもしれないけれど、フィル・スペクターのベスト10を発表させてもらいます。選曲していて思ったんだけど、よほどへそ曲がりな選び方をしないかぎり、半分くらいは重な...
九産大講義

現代文学として『源氏物語』を読む……第1回

 後期の授業では皆さんと一緒に『源氏物語』を読んでみようと思います。なぜ『源氏物語』を取り上げるかというと、まず面白いからです。なにしろ不義密通と近親相姦の話ですからね。面白くないはずがない。そこに物の怪や怪異現象が加わります。  ...
まぐまぐ日記

まぐまぐ日記・2012年……(3)

9月7日(水)晴れ  9月に入って一週間。夏休み気分を脱するべく、少しずつ小説を再開している。いま書いているのは、この「まぐまぐ」に連載中の『愛についてなお語るべきこと』だ。全12章で一年間の連載予定である。じつは、半分くら...
こんな絵

ぼくはこんな絵を掛けている……⑤

 10年ほど前にオーストラリアのケアンズに行ったときに買った版画。いわゆるアボリジナル・アート。街を散歩しているときに小さなギャラリー兼アトリエみたいなところがあり、入ってみると先住民(アボリジニ)の内気そうな若者がいた。客はぼく一人。作...
まぐまぐ日記

まぐまぐ日記・2012年……(2)

8月28日(日)晴れ  午後から剣道6段の審査を見に行く。ぼくは去年、ようやく5段に昇段することができた。4年後からは、6段への挑戦がはじまる。それで審査がどんなものか、様子を見に行ったのだ。ぼくが剣道をはじめたのは35のと...
ネコふんじゃった

59)エイモス・ギャレットのギターにしびれる

 マリア・マルダーが夫であったジェフ・マルダーとのコンビを解消し、ソロとなっての第一作。レニー・ワロンカーとジョー・ボイドという敏腕プロデューサーのもと、集められたミュージシャンの顔ぶれがすごい。ジム・ケルトナー、クリス・パーカー...
まぐまぐ日記

まぐまぐ日記・2012年……(1)

8月25日(木)曇り・晴れ  講演原稿「『出発』としての死」に手を入れる。これは十一月に、九州大学付属病院の癌患者さんたちの前でお話する予定のもの。へヴィだ~。なんとなく引き受けてしまったけれど、何を話せばいいだろう。とりあ...
こんな絵

ぼくはこんな絵を掛けている……④

 前回はパリのデパートで絵を買ったなんて、柄にもなく高級そうなことを書いたけれど、いつもそんなことをやっているわけじゃなくて、あのときが最初で最後。何事も無理はいけません。というわけで、今日はぐっとカジュアルにナフコで絵を買った話をしよう...
ぼく自身のための広告

ぼく自身のための広告(33)

33 ぼくの好きなライブ盤、ベスト5!  今年はコロナの影響で野外コンサートもほとんど中止になってようですね。アイキャッチの写真はザ・バンドの『ロック・オブ・エイジズ』のアメリカ盤です。東京で私立大学の試験を終え、高田馬場あたりのレ...
こんな絵

ぼくはこんな絵を掛けている……③

 今日も絵を一枚紹介しよう。リビングのいちばん広い壁に掛けているリトグラフは、15年ほど前にはじめてヨーロッパへ行ったとき、パリのデパートで買ったもの。部屋に絵を飾るといっても、やっぱり油絵は高い。買うとしてもサムホールくらいの小さなもの...
ぼく自身のための広告

ぼく自身のための広告(32)

32 ぼくの好きなレゲエ・アルバム  去年の「今日のさけび」で7月に公開したもの。写真付きで再集録します。アイキャッチにはアナログ盤の写真を使いたかったんだけど、レゲエのレコードは全部処分して一枚も手元になかった。CDで買いなおした...
こんな絵

ぼくはこんな絵を掛けている……②

 階段の踊り場に掛けているこの絵は、数年前に写真家の小平尚典さんとカリフォルニアを旅していたとき、サリナスという小さな町のギャラリーで買ったもの。サンフランシスコからロスへ向かって少し南下したこの町に、ジョン・スタインベックの博物館がある...
こんな絵

ぼくはこんな絵を掛けている……①

 「ぼくらラボ」を一緒にやっているデザイナーの東裕治さんに便乗して、ぼくも最近は「半径10mの幸せ」なんて言っている。その東さんが前から提案しているのが、家のなかに気に入った絵やポスターを飾ろうということだ。たしかに日本の家って絵がないよ...
ネコふんじゃった

58)みずみずしいガット・ギターの響き

 ときは七十年代後半、世に「フュージョン」「クロスオーバー」と呼ばれる音楽の全盛期。ガット・ギターを抱えて颯爽と登場した青年がいた。それまでガット・ギター(ナイロン弦で、基本的に指弾き)といえば、クラシックかせいぜいボサ・ノヴァで使われる...
ネコふんじゃった

57)ボサ・ノヴァの女王、デビュー作

 ときは1963年、かの名作『ゲッツ・ジルベルト』の録音時。スタジオに遊びに来ていた妻に、夫のジョアンが「おまえも一曲歌ってみないか」と声をかけたのが、そもそものはじまりであった。いくらジョアン・ジルベルトの妻とはいえ、素人に一曲...
ネコふんじゃった

56 仲間たちの死を乗り越えて

 ロックという音楽の特徴の一つが、スピード感にあることは間違いない。若さとエネルギーに溢れたテンポとリズムがもたらす爽快さは、クラシックやジャズでは得られない魅力だ。これはロック・ミュージシャンの生き方にもつながっている。生から死へと疾走...
あの日のジョブズは

あの日のジョブズは(20)

20 世界を取り戻す  ジョブズがものを食べるシーンを思い描くことができない。何本か作られたジョブズ関連の映画やドキュメンタリーでも、食事のシーンはほとんど出てこなかったように思う。アシュトン・カッチャーが主演した映画では、レストラ...
アフター・コロナ

アフター・コロナ(6)

6  近い将来、ぼくたちは健康状態から感情に至るまで、24時間年内無休の監視下に置かれることになるだろう。それは現在、アマゾンやグーグルのサービスを利用しているようなかたちで民主的に、管理する者とされる者との共犯性においてなされるは...
アフター・コロナ

アフター・コロナ(5)

5  現在の新型コロナ・ウイルスにたいする鎖国状態は過渡的なものだと思う。民族や地理によって差異化された国民(ネーション)ではウイルスに対処できない。いずれはGAFAやBATの支援を受けた超国家機関がトランスナショナルに人々を管理す...
アフター・コロナ

アフター・コロナ(4)

4  21世紀の現実世界を管理するのは、目下のところGAFAのような超国籍IT企業ということになりそうだ。将来はBATなども参入してくるかもしれない。だが、それらはあくまで表面的なことだろう。たしかに彼らは商売をしており、そのために...
アフター・コロナ

アフター・コロナ(3)

3  ぼくたちは「自分」を中心として、全球的に無際限につながっている。自己が世界の中心を占めているという全能感は、裏を返せば、その自己をめがけて世界が押し寄せてくるということでもある。あらゆるレイヤーからの膨大な情報が不断に、かつ瞬...
あの日のジョブズは

あの日のジョブズは(19)

19 孤独の惑星  エア・ビー・アンド・ビー(Airbnb)などのマッチング・サイトがやっていることは、「余っているモノ」と「必要な人」をいかに結びつけるかということだ。インターネットの登場によって、こうしたマッチングが格段に容易に...
アフター・コロナ

アフター・コロナ(2)

2 エア・ビー・アンド・ビー(Airbnb)などのマッチング・サイトがやっていることは、「余っているモノ」と「必要な人」をいかに結びつけるかということだ。インターネットの登場によって、こうしたマッチングが格段に容易になった。そこで様々なビ...
あの日のジョブズは

あの日のジョブズは(18)

18 つながりっぱなしの世界  インターネットの起源は、ENIACなど現代型コンピュータと同じあたりまで遡ることができる。そしてENIACがそうだったように、インターネットもやはり軍、大学、民間企業という三つのグループのパートナーシ...
あの日のジョブズは

あの日のジョブズは(17)

17 貧困をビジネスにする  アップルの製品の頭に「i」が付くようになったのは1998年のiMacからだ。このときのマーケティング戦略が「シンク・ディファレント」であったことを考えると、「i」は人称代名詞の「I」、つまり「自分」とい...
あの日のジョブズは

あの日のジョブズは(16)

16 消えた少年たち  オースティン・スコット・カードの小説『消えた少年たち』の主人公、7歳の少年スティーヴィは毎日学校から帰るとスクリーンの前に坐り込んでコンピュータ・ゲームばかりしている。彼には一緒にゲームをする友だちがいて、ジ...
あの日のジョブズは

あの日のジョブズは(15)

15 林檎をデザインする  1976年にウォズニアックとアップル・コンピュータを立ち上げ、新製品としてアップルⅡの設計に取り組んでいたときのこと、ジョブズはケースを通常の灰色をした不細工な金属ではなく、流麗なプラスチック製のものにし...
あの日のジョブズは

あの日のジョブズは(14)

14 ウォーホル、ベートーヴェン、ドストエフスキー、そしてジョブズ  何年か前のこと、ある街のアップル・ストアに立ち寄った。新型のiPhoneが発売されたばかりだったのだろう。店内の壁一面に、色とりどりのスマートフォンが整然とディス...
あの日のジョブズは

あの日のジョブズは(13)

13 ホール・アースな問題  ロラン・バルトは写真の登場について、人々が鏡で見るのとは違ったふうに自分自身の姿を見るようになったのは、歴史的にはごく最近のことであると述べている(『明るい部屋』)。フランス人のニエプスによって写真が発...
あの日のジョブズは

あの日のジョブズは(12)

12 フレンドリーなコンピュータ  1906年に設立されたハロイド・コーポレーションはのちにゼロックスと社名を変え、その規模の拡大とともに幾つもの企業を買収していった。1969年にはコンピュータ会社を買収し、スタンフォードと隣り合う...
あの日のジョブズは

あの日のジョブズは(11)

11 カリフォルニア・ドリーミング  1960年代のはじめごろ、カリフォルニア南部ではサーフィンが大流行していた。サーファーたちの多くはバンドをやっていて、それなりに地元のファンをつかんでいたらしい。レコードとして残っているものはほ...
あの日のジョブズは

あの日のジョブズは(10)

10 世界を変える   アップルが世界的なパーソナル・コンピュータ企業になったころ、ジョブズは「コンピュータが一人一台の世界になれば何かが変わるはず、10人に一台の世界とはまったく違ったものになるはず、10人に一台の世界とはま...
あの日のジョブズは

あの日のジョブズは(9)

9 シリコン・バレー  サン・ノゼからパロ・アルトをサウス・サンフランシスコまで60キロメートル以上にわたってつづくサンタクララ・バレーは、現在ではヒューレッド・パカードやインテルをはじめとして、アップル、グーグル、フェイスブック、...
あの日のジョブズは

あの日のジョブズは(8)

8 すい臓がんのイエス  神の子・イエスを生み出したのは、ローマ帝国に支配されたユダヤ人の絶望感だった。マルコたちによって書かれたイエスをめぐる物語が福音(良い知らせ)としてもたらされたころ、パレスチナはローマによって制圧され、ユダ...
あの日のジョブズは

あの日のジョブズは(7)

7 神をポケットに入れて  ジョブズのプレゼンテーションはすでに伝説になっている。製品の売上総額をプレゼンの時間で割った数字から「3分間で100億円を生む」とも言われた。1998年のiMac、2007年のiPhone、翌年のマックブ...
あの日のジョブズは

あの日のジョブズは(6)

6 クリスト・ドライブ2066  あたりは閑静な住宅地だ。平日の昼下がりで、人通りはほとんどない。目的のガレージはすぐに見つかった。郵便ポストに「2066」と書いてある。その横に「立ち入り禁止」の看板が立ち、「防犯カメラが作動してい...
ネコふんじゃった

55 こんなぼくですけど

 ジャケットを思い浮かべるだけで、幸せな気分になれるレコードがある。このアルバムなどは、さしずめその最たるもの。ちょっと太目のお兄さんが、タキシードにけったいな蝶ネクタイをしめて、そろそろ床屋へ行った方がよさそうな髪には軽い寝癖が。いった...
アフター・コロナ

アフター・コロナ(1)

1  一部の専門家たちにとっての「真理」が、ネットワークを通して世界中に拡散すると、現行のシステムを破壊しかねないほどのものになる。「正しいこと」が瞬時に世界中に拡散することで、ほとんど世界大戦並みの荒廃が引き起こされる。それがいま...