ジョンの死は、わけがわからなかった。それから二十一年後、ジョージが亡くなったときは純粋に悲しかった。ビートルズのアンソロジー・シリーズが完結し、これからは三人で「ビートルズ」をやっていくのだと思っていた矢先。ジョージの死によって、ぼくのなかでビートルズは完全に「解散」した。
バンド解散後(一九七〇年)に発表された、ジョージの実質的なデビュー・アルバムである。ジョンとポールの陰に隠れて、なかなか作品を発表できなかった彼が、ビートルズ時代に書きためた曲も含めて、その才能を「どうだ!」とばかりに吐き出した、圧倒的な三枚組だ。
最初の二枚がスタジオ録音で、残り一枚がエリック・クラプトンたちとの楽しいジャム・セッション。とくにスタジオで録音された十九曲は、どれも素晴らしい出来だ。力強い曲、心がはずむ曲、荘厳な美しさを湛えた曲……と非常にバラエティに富んでいる。フィル・スペクターの音作りは、曲によってはオーバー・プロデュースのようにも聞こえるが、当時のジョージの情熱、勢いにはふさわしい気がする。
豪華な箱に入って、国内盤は五千円だった。中学生にはなかなか手の出ないお値段。でも、まわりの友だちの何人かは、このレコードを持っていた。それほど当時のジョージは人気があったし、作品の評価は高かったのだ。
二〇〇一年には、ボーナス・トラックを収録したリマスター盤も出た。ビートルズのアルバムとともに、長く聴き継がれていく作品だと思う。(2013年12月)