37 大好きな『大地の歌』だけれど

ネコふんじゃった
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 今年のサイトウ・キネン・オーケストラのメイン・プログラムは、マーラーの交響曲第一番『巨人』だったそうだ。コンサートを聴きに行った友だちからその話を聞いて、このところまたマーラーを聴いている。もう二十年近く前になるだろうか、ずいぶん入れ揚げて、いろんなディスクを買い集めたことがあった。
 マーラーの交響曲では一番や四番あたりをよく聴くが、なんといってもいちばん好きなのは『大地の歌』だ。ひところは、この曲と心中してもいいと思うくらい惚れ込んだものだった。それほど好きな『大地の歌』だけれど、これはという理想的な演奏がない。たとえば一九五二年のワルター盤は名盤の誉れ高いものだが、ぼくはどうもフェリアーのメゾソプラノが苦手なのだ。六六年のバーンスタイン盤は偶数楽章をバリトンにしたのがマイナス、クレンペラーはテンポが遅すぎる……という具合で、どれもいまひとつ満足できない。どうやらオーケストラの演奏に加えて、テノールとメゾソプラノと二人の歌手を揃えなければならない点が、ネックになっているようだ。
 そこで目先を変えて、最近はシェーンベルクが室内楽用に編曲したディスクをよく聴いている。ピアノが入っていたりして、はじめは違和感があるかもしれないが、少ない人数で演奏しているぶん、作品の輪郭がとらえやすい。二人の歌手もなかなか優秀で、マーラーの「歌もの」としての魅力は大きい。ハイブリッドのSACDで、普通のCDプレーヤーでも再生できるので、見つけたら聴いてみてください。(2008年11月)