10 いつかはジョアン・ジルベルトのように

ネコふんじゃった
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年に数回、仕事で東京へ行くことがある。出版社が近いので、たいてい一日は、御茶ノ水から神保町の界隈をうろうろする。あのあたりって、どうしてカレー屋と楽器店が多いのだろう。過日、そんな中古楽器店の一つにふらりと足を踏み入れた。スペイン製のクラシック・ギターでいいのが入っていた。正目のボディが美しい。値段も手ごろだ。さっそく前金を一万円だけ払った。
ボサノバと呼ばれている音楽において、ギターの果たす役割はきわめて大きい。ギター一本でボサノバの演奏は成立してしまう、と言っても過言ではない。すなわち右手の親指でルート音を刻み、残りの三本(小指は除く)で変則的なシンコペーションのリズムを奏でる。うまく組み合わせると、あの粋でクールなビートが生まれる。なんてインテリジェント! そうした奏法を発明したのが、今回登場のジョアン・ジルベルト先生である。いや、気安く「先生」などと言ってはいけない。人は彼を「神様」と呼ぶ。
このアルバムは、神様のギターと声だけでほとんどが作られている。まずは一曲目の「三月の雨」を聴いてみてほしい。おそるべきリズム感である。ギターのみならず、ヴォーカルにおいても。「ポルトガル語って、なんて美しい言葉だろう」と思わずにはいられない。ちょうどカレン・カーペンターの歌を聴くとき、「英語って、なんて美しい言葉だろう」と嘆息を禁じえないように。
というわけで、今日も「イパネマの娘」を練習しよう。オーリャキコイザマイジリンダ~。(2006年10月)