67)レゲエがいちばんレゲエらしかったころ

ネコふんじゃった
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 三拍目にドラムスがアクセントを付け、二拍目と四拍目でギターやキーボードがしゃくり上げるようなリフを刻む。こうしたレゲエの基本的なリズムが確立されたのは、ボブ・マーレイ&ザ・ウェイラーズが『キャッチ・ザ・ファイヤー』を発表した一九七三年前後のこと。

 今回取り上げたCDは、一九七二年に作られたジミー・クリフ主演の映画のサントラ盤である。したがって厳密にはレゲエ以前のスカやロック・ステディといったタイプの曲も入っている。しかしうるさいことは抜きにして、これぞレゲエの入門書、レゲエの教科書たるべきアルバムと言っていいだろう。

 全一二曲のうち半分をジミー・クリフの作品が占める。どれも彼の代表曲ばかりだ。あと六曲、メイタルズやデスモンド・デッカーなどの作品が入っている。とにかく名曲ぞろい。四十年くらい前の曲なのに、どの曲も昨日生まれたばかりのように新鮮に聞こえる。素朴な温かみがあって、ぼくはこの時代のレゲエがいちばん好きかもしれない。

 映画ではジミー・クリフがスター歌手をめざしながら、マリファナの買人に身をやつしていくルードボーイ(チンピラ)を演じている。たわいのない内容だが、ゲットーの熱気とスピード感にあふれた勢いのある映画だ。最後は警官に追い詰められ、銃撃戦の末に致命傷を負う。外国へ向かう船に必死で泳ぎ着こうとする主人公。しかし船は非情にも、彼を残して遠ざかっていく。ジャマイカの透明な海が美しい。(2011年5月)