81)おしゃれなデュオ、夏の定番

ネコふんじゃった
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 それぞれソロとして活動していたベン・ワットとトレイシー・ソーンが、いつのまにかエブリシング・バット・ザ・ガールというデュオになっていたのには、ちょっと驚いた。もともとベン・ワットは贔屓のミュージシャンだった。トレイシーのソロ・アルバムも、わりと気に入っていた。そんなわけでぼくは、かなり期待して彼らのアルバムを買った。

 悪くはない。でも正直なところ、ぼくはベン・ワットの清涼感のあるソロの方が好きだった。いま聴いても、一枚目と二枚目は、バックの音がやや過剰で、彼らの持ち味を削いでいる気がする。大仰なストリングスを導入した三枚目などは、まったくいただけない。

 ところが四枚目の本作は、文句をつけようがないほど素晴らしい。聴きつづけてきてよかった。これこそ、彼らが作りたかった音ではないだろうか。バックの音をシンプルにしたことが、何よりも成功の要因だろう。基本はプログラミングされたドラムに、ベースとキーボード、それにベンのギターだ。これでこそ、ちょっと糸を引くようなトレイシーのヴォーカルは生きる。収められた楽曲のクオリティも高い。どの曲も耳障りのいい、チャーミングなメロディをもっている。

 このころからベン・ワットはほとんどうたわず、もっぱらサウンド・プロダクションにまわるようになる。ちょっと残念な気もするが、バンドとしては正解だろう。彼のギターは、音色といい奏法といい、はじめて聴いたときのように新鮮だ。夏のドライブに最適な一枚。(2009年7月)