83)木漏れ日のような音楽

ネコふんじゃった
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 しばらく前に『グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ』という本が出版され、話題になったことがある。彼らはインターネットが普及するはるか以前から、自分たちの作品を著作権で囲わずに解放するとか、ライブ録音を許可するといった、現在のシェアやフリーミアムのスタイルを実行し、しかもビジネスとして大きな利益を上げてきた。

 その本を読むと、彼らのやり方の根本には、リーダーのジェリー・ガルシアを中心とするメンバーたちの、ファンとのつながりを大切にする姿勢があったことがわかる。このことは彼らの音楽にも反映されている。たとえばトレードマークの一つである長い即興演奏にしても、演奏する側と聴いている側の心地よさを生み出そうとして、結果的に長くなっただけで、難解なところはまったくない。二十分を超える長い演奏でも耳当たりが良く、温かみがあるのだ。

 今回取り上げたアルバムは一九七〇年に発表されたもので、それまでのサイケデリックな色合いは影をひそめ、メロディとハーモニーを重視した聴きやすいものになっている。内容的にはフォーク、ロック、ブルース、カントリーなど、いわゆるルーツ音楽を指向したものと言えるだろう。

 活動期間の長いバンドだけに、アルバムはオフィシャルなものだけで二〇枚以上にのぼり、さらに前述の事情によって、ライブ音源も膨大に残されている。まず一枚という方には、このアルバムか、つぎの『アメリカン・ビューティ』あたりをお勧めしたい。(2009年9月)