82)よくぞここまで! まさに完璧な一枚

ネコふんじゃった
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 ブライアン・イーノがいたころの初期のロクシー・ミュージックは、ヴィジュアル的にも音楽的にも派手で、アイデアや実験性が先行した、頭でっかちのアマチュアっぽいバンド、という印象が強かった。

 その後、イーノが脱退したのを契機に、ロクシーはブライアン・フェリーを中心にメンバーを入れ替えながら、徐々に演奏能力の高い洗練されたバンドへと進化を遂げていく。その完成形が、このラスト・アルバムだろう。

 デビュー時からのメンバーは、フェリーの他にはフィル・マンザネラ(ギター)とアンディ・マッケイ(サックス)の三人だけ。サポート・メンバーとして参加したアンディ・ニューマーク(ドラムス)とアラン・スペナー(ベース)が、ソウル・ファンク色の強い鉄壁なグルーブを生み出している。

 一曲目の「夜に抱かれて」から最後の「タラ」まで、ドラマチックで神秘的な音の世界が展開する。とくに後半、「テイク・ア・チャンス・ウィズ・ミー」「トゥ・ターン・ユー・オン」「トゥルー・トゥ・ライフ」とつづく三曲は、もう三十年も聴きつづけているのに、聴くたびに新鮮でうっとりしてしまう。

 フェリーが追い求めつづけたダンディズムやロマンティシズムが、雰囲気のある繊細なサウンドとして結実したアルバム。深いエコーを生かしたボブ・クリアマウンテンのミックスといい、内容を見事に視覚化したジャケットといい、まさに非の打ちどころのない一枚である。(2009年8月)