92)30年で4枚!

ネコふんじゃった
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 ブルー・ナイルというロマンチックな名前をもつ、グラスゴー出身の三人組の、これは1989年にリリースされたセカンド・アルバム。グループ名のとおり、悠久の川の流れを想わせる、静かで美しい音楽である。

 三人はいずれもグラスゴー大学の卒業生で、プロ・デビュー前はそれぞれ別の仕事に就いていたらしい。とくに傑出したテクニックをもつメンバーがいるわけではない。使っている楽器もギター、ベース、シンセサイザー、ドラムスといった、どちらかというとシンプルなもの。しかし音色の選び方とかサウンドの組み立て方とか、とにかく趣味がいい。音のセンスが抜群なのだ。まず無駄な音が入っていない。ドラムマシンなどデジタル楽器も巧みに使い、空間的に広がりのある音の世界をつくり上げている。深みのある音像は、ときに神秘的でさえある。このあたりはいかにもイギリス、しかもエディンバラあたりのスコットランドを想わせるイメージだ。

 デビューから三十年になるけれど、気品のある音作りにほとんど変化はない。中心メンバーであるポール・ブキャナンの書く曲のメロディが独特なので、変わりようがないのかもしれない。彼の個性的な声と相まって、幻想的な音の世界へ連れて行ってくれる。過去の四枚のアルバムはいずれも傑作だが、唯一の欠点は寡作であること。何しろ三十年間で四枚である。前作からでも、もう十年だ。つぎのアルバムがいつ出るかわからないけれど、過去の作品を繰り返し聴きながら、辛抱強く待ちつづけようと思う。(2010年6月)