65)オルガンでボサ・ノヴァを

ネコふんじゃった
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 まず「レイン・フォーレスト」というアルバム・タイトルがいいですね。ジャケットの写真は温室でしょうか、熱帯の植物や鳥をあしらった演出が、そこはかとないエキゾチズムを醸し出します。演奏者の名前と並べて、少し小さな文字で「ブラジル・ナンバー・ワンのオルガニスト」なんて書いてあります。

 ワルター・ワンダレーはブラジル出身のオルガン弾き。一九三二年生まれといいますから、アントニオ・カルロス・ジョビンやジョアン・ジルベルトと同世代の人です。このアルバムは、そのワンダレーがヴァーヴ・レコードに招かれて発表した一作目。プロデューサーはクリード・テイラー。そう、あの『ゲッツ・ジルベルト』を制作した人です。このあとテイラーはA&Mに移って自らのCTIレーベルを立ち上げ、ジョビンの『波』など、後に「クロスオーバー」と呼ばれることになる数々の名品を世に送り出します。

 さて、オルガンでボサ・ノヴァを演奏するというのは、ありそうで意外とない。セルジオ・メンデスの場合も、メインの楽器はピアノです。ジャズ系のオルガニストの多くは、ブルースやゴスペルの影響が強く、クールで知的なボサ・ノヴァには不向きなのかもしれません。その点、ワンダレーはエレガントと言っていいほど、洗練された気持ちのいい演奏をします。サンバを思わせるパーカッシブなタッチと、オルガン独特の音を長く伸ばす奏法をうまく使い分けて、どの曲も本当に心地よく聞かせます。トニー・ハッチの「コール・ミー」を取り上げているのも○。(2011年3月)