46 アンビエントな夜のために

ネコふんじゃった
この記事は約2分で読めます。

 ブライアン・イーノが「アンビエント・ミュージック」というジャンルを作り出さなければ、この手の音楽との出会いはずっと遅れていただろう。いや、まったく出会わなかった可能性もある。そう考えると、イーノ先生に感謝です。

 作者のハロルド・バッドは、一九三六年、ロサンゼルス生まれの作曲家で、大学卒業後はミニマル的な作品を作っていたということだから、もともと現代音楽のフィールドの人なのだろう。現代音楽と聞くと「難しい」「わからない」という先入観をもつ人は多いかもしれないけれど、その点はご安心を。このアルバムにはいっている曲はどれも耳あたりがよく、高級なBGMといった感じのものばかりである。

 たとえば一曲目の「ビスミラーイ・ラーマニ・ラーヒム」(コーランのなかの文句らしい)は、マリオン・ブラウンのアルト・サックスを中心に、エレクトリック・ピアノ、ハープ、チェレスタ、グロッケンシュピール、数台のマリンバという編成である。こうした楽器編成からして、いかにも現代音楽っぽいが、浮遊する淡いメロディがとても心地いい。その他の曲も、ハープ、マリンバ、ピアノ、ヴォーカルなどが様々に組み合わされ、静謐な時間を紡ぎだしていく。尖った難解さや攻撃性は皆無、どの曲も夢見心地のリラクゼーションに誘ってくれる。

 美しい癒しの音楽にぼんやりと身を任せるもよし、小さな音で流しながら読書をするもよし。秋の夜長のひととき、窓の外の虫の音とともにどうぞ。 (ハロルド・バッド『夢のパビリオン』 2009年8月)