中学三年生のときのオイルショックで、それまで二千円だったLPレコードが二千五百円になった。おこずかいは月に二千円だったので、五百円の値上げは痛かった。欲しいレコードはたくさんあるのに……。
そのころ幾つかのレコード会社がサンプラー盤というのを出していた。各社を代表するミュージシャンの作品を各一曲ずつ収録したもので、レコード会社に直接注文して送ってもらう。だいたい二枚組みで千円くらいだった。ジャケットはひどいし、なんとなく試供品みたいでうれしくなかったけれど、背に腹は替えられない。
ライ・クーダーの音楽とは、そのようにして出会った。高校一年生の夏休みに注文したワーナーのサンプラー盤に、「ダーク・エンド・オブ・ザ・ストリート」が入っていたのである。鳥肌が立つほどカッコイイと思った。ボトルネック奏法というのも、この曲ではじめて知った。自分でもやってみたいと思い、いろいろ試した結果、ベンザエースの空き瓶がぼくの指にはいちばんぴったりだった。
その後、ジェームス・カーやダン・ペンの「ダーク・エンド・オブ・ザ・ストリート」も聴いた。あらためて歌詞を見て驚いた。通りの向こうの暗闇で人目を忍んで会う二人、不倫カップルの歌であったとは! ライ・クーダーの演奏は七十二年の『流れ者の物語』に入っている。このアルバムと、つぎの『パラダイス・アンド・ランチ』、さらに『チキン・スキン・ミュージック』あたりが、個人的にはいちばん愛着がある。(2007年9月)
22 サンプラー盤を買っていたころ
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