ぼく自身のための広告

ぼく自身のための広告(1)

1 机の上  ぼくが仕事をしている机の上はこんな感じ。ご覧の通り、なんの変哲もない。ただごちゃごちゃといろんなものが乗っかっているだけである。つまんない。まあ、仕事をするところだからね。面白おかしくなくてもいいのだ。  この机は、い...
ネコふんじゃった

36 生まれたときから、ずっと名盤

 このアルバムを最初に聴いたのは高校二年生の冬、友だちのY君の家だった。部屋の隅では、石油ストーブが燃えていた。ちょっとお腹が減ったので、Y君がゆで卵をつくってくれた。コーヒーを淹れて準備完了。レコードに針を下ろす、一曲目の「愛のゆくえ」が...
The Road To Singurality

The Road To Singularity ~未知の世界を生きる(Ep.7)

7 星空に抱かれて  午後11時にボブと一緒に星を見に行く。さすがに外は真っ暗だ。ロッジを出たときには、「なんだ、こんなものか」と思った。この程度の星空なら日本でも何度か見ている。だが一分ほど経って、暗闇に目が慣れてくると腰を抜かしそ...
The Road To Singurality

The Road To Singularity ~未知の世界を生きる(Ep.6)

6 善なるものの宿るところ  今夜は飲みに行こう、とやさしい言葉をかけてくれた師匠であったが、夕食を済ませると早々に写真を撮りに行ってしまった。まあ、ぼくだってそんなにいつまでもめそめそしていない。立ち直りの早い二人である。  夕食...
ネコふんじゃった

35 アイズレーが歩んできたロング&ワインディングな道

 最初に一言。彼らの場合、ジャケットには目をつぶらなければならない。どのアルバムも、ド派手なステージ衣装に身を固めた六人のあまり美しくない男たちが、「8時だヨ!全員集合」という感じで写っている。同じパターンが「これでもか」というくらいつづく...
The Road To Singurality

The Road To Singularity ~未知の世界を生きる(Ep.5)

5 青年はマウント・レーニアをめざす  ボブの運転する日産のレンタカーは一路、つぎの目的地をめざして走っている。昨夜の宿はシアトル郊外ベルヴュー(Bellevue)のホテルだった。今夜はマウント・レーニア国立公園(Mt.Rainier...
The Road To Singurality

The Road To Singularity ~未知の世界を生きる(Ep.4)

4 レジのないコンビニで買い物をする  坂垣巴留さんのコミック『BEASTARS』は動物たちを主人公とした学園ドラマである。中高一貫全寮制の学園では肉食獣と草食獣が危うい共存関係を保っている。あるときオスのアルパカが何者かに殺害される...
The Road To Singurality

The Road To Singularity ~未知の世界を生きる(Ep.3)

3 犬を連れて働く人たち  午前十一時半、シアトルは曇りだ。寝不足の頭と重いスーツケースを抱え、ぼくたちはシャトルバスでレンタカーセンターへ向かう。アメリカの空港はこんなふうにターミナルから少し離れたところにセンターがあって、エイヴィ...
ネコふんじゃった

34 水割りの味とトム・ウェイツ

 若いころは、ウィスキーの水割りを美味しいと思ったことはなかった。ああいうのは結婚式などで、時間つぶしに飲むものだった。最近は、焼酎でもウィスキーでも、お湯や水で薄く割ったものを好んで飲んでいる。歳のせいでしょうかねえ。  水割りの味をお...
The Road To Singurality

The Road To Singularity ~未知の世界を生きる(Ep.2)

2 いざ、シアトルへ  このところボブは、なんでもシンギュラリティにしてしまう。美味しいカレーを食べると、「おお、シンギュラリティ!」なんて叫ぶし、ボストン美術館にあるポール・ゴーギャンの絵も、彼に言わせるとシンギュラリティなのだそう...
ネコふんじゃった

33 いつもクールなデスモンドのサックス

 ポール・デスモンドというと、条件反射的に「テイク・ファイブ」の人ということになってしまうのは、致し方ないことかもしれない。彼の名前は知らなくても、あのメロディを耳にすれば、大半の人が「ああ、この曲か」となるはずである。ちなみに初演は、デイ...
The Road To Singurality

The Road To Singularity ~未知の世界を生きる(Ep.1)

1 新しい世界宗教  新しい宗教が生まれつつある。その名を「シンギュラリティ」という。ええっ! シンギュラリティって宗教なのか? その通り。シンギュラリティは21世紀の新しい宗教です。しかも70億を超える人類すべてを帰依させる力をもっ...
講演原稿

人間創生としてのシンギュラリティ

1 人間vs人工知能  AIにかんする議論を見ていて感じるのは、この世界がどこに向かっているのか、誰にもわからなくなっているということです。非常に大きな変動が起こっていることは間違いなのですが、世界規模で進行する変化の速さに多くの人がつい...
ネコふんじゃった

32 中学生がもらった一枚のはがき

 中学三年生の夏休みに、街のレコード屋さんから一枚のはがきが届いた。裏側に写真が印刷されていて、ストリート・ギャングみたいな柄の悪いお兄さんたちがこっちを睨んでいる。なんなんだ、この人たちは。  それはレコード会社が作ったプロモーション用...
ネコふんじゃった

31 クラシック音楽との出会い

 中学生のころは、よくラジオを聴きながら勉強していた。そこで耳にして、好きになった曲もたくさんある。デオダードの「ラプソディ・イン・ブルー」も、そんな曲の一つだ。  原曲はガーシュインのピアノ協奏曲。夢見るような美しいメロディが気に入った...
ネコふんじゃった

30 二人は別れてしまったけれど

 イギリスのフォーク・ロック・バンド、フェアポート・コンヴェンションの中心メンバーだったリチャード・トンプソンが、バンドを脱退した後に奥さんのリンダと結成した夫婦デュオの、これはラスト・アルバムにして最高傑作。  リチャードの個性的なギタ...
ネコふんじゃった

29 ヴァン・モリソンに駄作はない

 たぶん、ないと思う。そういうことにしておこう。駄作はない、と断言できないのは、三十枚以上出ている彼のアルバムを、すべて聴いたわけではないから。でも、半分くらいは聴いている。それで言えることは、どのアルバムも、やりたいこと、歌いたいことがは...
ネコふんじゃった

28 ジョン・セバスチャンは、たんぽぽみたいなミュージシャンです

 今年は一月が暖かく、このまま春になったのではありがたみがないな、と思っていたら、二月になってようやく寒くなってくれた。北国の人には叱られるかもしれないけれど、やっぱり冬はきちんと寒い方がいい。こちらは立春を過ぎると、風は冷たくても日差しは...
往復書簡

往復書簡「歩く浄土」(16)

第十六信・片山恭一様(2018年2月18日) 1  第十五信をいただいてからちょうどひと月になります。圧巻の内容でくり返し読みかえしました。よくつづくものだとふしぎですが、対話も五年目になりますね。熊本も今冬はいつもより寒かったので...
往復書簡

往復書簡「歩く浄土」(15)

第十五信・森崎茂様(2018年1月18日) あけましておめでとうございます。今年も元気の出る、音色のいい言葉を紡いでいきたいと思います。どうぞ、よろしくお願いいたします。 この往復書簡、去年(2017年)12月6日に森崎さんから第十四信を...
ネコふんじゃった

27 冬の寒い朝に聴きたい、透明感あふれるデュオ

 ここ福岡では、雪が積もることは一年に一度あるかないか、氷が張るなんて事態は、もう何年も記憶にありません。やはり温暖化の影響でしょうか。ぼくが小学生のころには、郷里の四国でも、冬になるとよく氷が張っていました。池や水溜りに張った氷を割りなが...
未分類

AIと恋・アイ

1  人間vs人工知能。この対立の構図自体は新しいものではありません。スタンリー・キューブリック監督の映画『2001年宇宙の旅』(1968年公開)では、宇宙船に搭載されたコンピュータ(HAL9000)が異常をきたし、自分を停止させようとす...
往復書簡

往復書簡『歩く浄土』(14)

第十四信・片山恭一様(2017年12月6日)  戦後の総敗北ということを、サイトの記事でも片山さんとの往復書簡でも取りあげ、しばらく考えてきました。その総仕上げとも言える柄谷行人の「憲法9条の存在意義 ルーツは『徳川の平和』」(毎日新...
ネコふんじゃった

26 あのころは毎日のように、ビリーの歌が聞こえていた

 あのころというのは、一九七七年から七八年ごろのこと。たとえば友だちの下宿やアパートを訪れる。するとFMラジオか何かから、『はぐれ刑事純情派』みたいな口笛が流れてくる。そしてはじまる「ストレンジャー」。もういい加減にしてくれ! と思うころに...
往復書簡

往復書簡『歩く浄土』(13)

第十三信・森崎茂様(2017年11月23日) 11月はじめにアメリカのトランプ大統領が来日して、6日に安倍首相と会談しました。翌日の新聞に共同会見の内容が出ていましたが、そのなかで安倍首相は北朝鮮問題について「今後取るべき方策について、完...
往復書簡

往復書簡『歩く浄土』(12)

第十二信・片山恭一様(2017年11月4日)  この往復書簡も第十二信となります。これまで4年近く片山さんと集中した討論をやってきて、言葉が噛み合うようになったという感じをもっています。ぼくたちが討論していることは、これまでだれも考え...
ネコふんじゃった

25 冬の夜は暖かい部屋でウィリー・ネルソンを聴こう

 カントリーの人である。カントリー・ミュージックというのは日本の民謡みたいなもので、ぼくのような者にはみんな同じに聞こえる。だから、どうしても敬遠してしまう。このアルバムは、あまりカントリーっぽくない。誰でも安心して(?)聴ける、大人の音楽...
往復書簡

往復書簡『歩く浄土』(11)

第十一信・森崎茂様(2017年10月26日)  いまの時代を象徴するものとして、あらためてスマホを取り上げます。前回の書簡で触れた、一心にスマホをする若い人たちについて、森崎さんは「ああ、かれらはかつてのおれだ」という引き寄せ方をして...
往復書簡

往復書簡『歩く浄土』(10)

第十信・片山恭一様(2017年10月15日)  片山さんから第9信をいただき読み始めて、すぐにハッと胸を衝かれたことがあったので、そこから往復書簡の第10信を書きます。皆が一心にスマホに没入することと北朝鮮危機に便乗することは同じこと...
往復書簡

往復書簡『歩く浄土』(9)

第九信・森崎茂様(2017年10月12日)  やはり最初に、2017年10月22日に投票がおこなわれる衆議院選挙について触れないわけにはいきませんね。森崎さんも10月8日付けのブログ(「歩く浄土」201)で、「いずれの政党も支持しない...
ネコふんじゃった

24 ジョージ・マーティンのちょっといい仕事

 「名前のない馬」の大ヒットで華々しいデビューを飾ったアメリカの、これは四枚目のアルバム(一九七四年発表)。本作から、ビートルズの育ての親であるジョージ・マーティンをプロデューサーに迎える。さわやかなアコースティック・サウンドが売り物だった...
講演原稿

さまざまな自然

 コペルニクスやガリレオが登場する以前は、地球のまわりを太陽や月といった天体がまわっていると考えられていました。それが当時の人たちにとっての自然でした。ぼくたちは地球が自転しながら太陽のまわりをまわっていることを知っています。現在ではそっち...
往復書簡

往復書簡『歩く浄土』(8)

第八信・片山恭一様(2017年9月24日)  わたしたちの思考の慣性は自己意識の用語法を観念の自然としている。この自然はわたしたちの存在を自己と対関係や家族と社会関係に類別します。この表現の全体をわたしは意識の外延表現と呼んできました...
往復書簡

往復書簡『歩く浄土』(7)

第七信・森崎茂様(2017年9月20日)  メキシコから一週間ぶりに帰ってくると、メディアは民進党の女性議員の不倫問題と皇室の娘さんの婚約発表で沸き立っていて、なんだ、なんだ、この国はいったいどうなっているんだ、とにわかに状況に順応で...
往復書簡

往復書簡『歩く浄土』(6)

第六信・片山恭一様(2017年9月12日) 1  ポール・ゴーギャンが19世紀に描いた「われわれはどこから来たのか われわれは何者か われわれはどこへ行くのか」とタイトルがつけられた絵があります。イスラエル人の歴史学者ユヴァル・ノア・ハ...
ネコふんじゃった

23 秋にはJTのアルバムを一枚ずつ聴いてみる

 最初に買ったジェイムス・テイラーのアルバムが、この『ワン・マン・ドッグ』だった。中学三年生の秋である。ビートルズが設立したアップル・レコードからデビューするものの、セールス的には振るわず、新たにワーナー・ブラザーズと契約を交わして再デビュ...
往復書簡

往復書簡『歩く浄土』(5)

第五信・森崎茂様(2017年9月7日)  メキシコに行ってまいりました。いや~、楽しかったなあ。三日間、シティの中心部をうろうろしていただけなので麻薬カルテルの影はなし、危険な目に遭うこともなく、ひたすらリベラ、シケイロス、オロスコな...
往復書簡

往復書簡『歩く浄土』(4)

第四信・片山恭一様(2017年9月6日)  メキシコはどうでしたか。ドン・ウンィズロウの『犬の力』や『ザ・カルテル』の雰囲気はありましたか。第三信の結びで片山さんは「いかに人間の未来を思い描くかによって、来るべき世界はユートピアにもな...
往復書簡

往復書簡『歩く浄土』(3)

第三信・森崎茂様(2017年8月30日)  さっそく返信をいただき、ありがとうございます。第二信の最後で言及されていた、俗と非俗のあいだのわずかな隙間ということ、とても微妙で難解ですが、大切なところですね。このわずかな隙間から、アーレ...
往復書簡

往復書簡『歩く浄土』(2)

第二信・片山恭一様(2017年8月27日)  2017年8月18日に片山さんと熊本で話をしたとき、お互いの言葉もこなれてきたので、往復書簡をやりませんかと呼びかけ、その第一信が送られてきた。定期的に熊本と福岡を往復しながら対話を持続し...