69)ギターの国、ブラジルの至宝

ネコふんじゃった
この記事は約2分で読めます。

 ブラジルはギターの国だ。ボサ・ノヴァで活躍するのはもちろんのこと、サンバやショーロではカヴァッキーニョの呼ばれる四弦ギターが使われる。ルイス=ボンファ、ローリンド=アルメイダなど、広く名前を知られているギタリストも多い。

そんななかでも、バーデン・パウエルはまず名前のあがる名手である。一般的にはボサ・ノヴァのギタリストとして認知されているかもしれない。もちろん圧倒的なテクニックをもつ人だから、ボサ・ノヴァなども軽々と弾いてしまうのだが、彼の本領は、もっと別のところにある気がする。もともとブラジルの音楽には、様々な要素が流れ込んでいる。ポルトガルやフランスなどのヨーロッパ音楽、黒人奴隷とともにもたらされたアフリカ音楽、さらに先住民であるインディオたちの音楽など。これらが混ざり合って、あのなんともいえないサウダージ(郷愁)が生まれる。バーデン・パウエルも、こうした多様な音楽的バックグラウンドをもつギタリストである。

このアルバムは一九七一年、ドイツでの録音されたもの。『孤独』というタイトルにふさわしい、しっとりとした曲が多い。彼にしてはいつになく淡々とした演奏だ。基本的にギター一本でなんでもできてしまう人だが、曲によってはベースとドラムスが隠し味的に使われている。曲目も、彼自身のオリジナルに混じって、ジョビンの曲や「いそしぎ」などのスタンダードが入っていて飽きさせない。夏の夜、物悲しくも甘美な演奏をお楽しみあれ。(2011年7月)