74)寒い冬の夜、炬燵のなかで

ネコふんじゃった
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 「プカプカ」の作者として知られる西岡恭蔵は、七〇年代を代表するソングライターの一人だ。彼が自作自演し、また他人に提供した名曲は数知れない。

 大塚まさじ、永井ようと三人で結成した「ザ・ディラン」でデビューしたころから、彼の書く曲はすでに完成されていた。デビュー作に収められた「君の窓から」「子供達の朝」「サーカスにはピエロが」は、すべて傑作である。その後、グループを離れてソロになった西岡は、『ディランにて』でシンガーとして再デビュー。『街行き村行き』につづいて発表された、ソロとしての三枚目が、この『ろっかばいまいべいびい』である。

 レコードのA面には、ニューオリンズからカリブ海のテイストを取り入れた、クオリティの高い西岡の楽曲が並ぶ。バンドは鈴木茂とハックル・バックに石田長生が加わった編成。洗練されてしなやかな演奏は聴きものだ。とくに石田はさえたプレイを連発する。B面はうって変わり、当時親交の深かった細野晴臣とのデュオ。リラックスしたムードのなか、アットホームな演奏を繰り広げる。細野はマルチ・プレイヤーぶりを発揮し、全面的に西岡をバックアップしている。西岡も細野の作品を二曲取り上げている。気の合う二人の仕事ぶりが微笑ましい。

 その後も、マイペースの活動をつづけていた西岡だが、病気で亡くなった奥さんのあとを追うようにして、一九九九年に自殺してしまう。そんな哀しいエピソードとともに、いつまでも忘れられないアーティストである。(2011年12月)