85)人類最高の交響曲

ネコふんじゃった
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今回はクラシックのお話。ぼくが好きな交響曲はたくさんある。モーツァルトの「プラハ」と四十番、ベートーヴェンの三番、六番、九番、シューベルトの「未完成」、マーラーの九番と「大地の歌」。ブラームスの四つの交響曲も捨てがたいし、七つあるシベリウスの交響曲も、それぞれ魅力的だ。

でもどれか一曲ということになると、スケールの大きさ、純音楽的な美しさ、深みや風格などから、ブルックナーの八番を選びたい気がする。第一楽章からして、荘厳な音楽世界に引き込まれる。ブルックナーを聴いていて楽しいのは、美しい旋律がつぎつぎに出てくるからだ。第二楽章のスケルツォは、野性味あふれるリズムのなかに、なんとも言えない寂寥感が漂う。そして世にも美しい第三楽章。モーツァルトの美しさには愉悦感がある。ブルックナーの音楽の美しさは、もっと神秘的な美しさ、恍惚とした陶酔感に誘われる美しさだ。力強いフィナーレは、天上的というよりも宇宙的である。

名曲だけに名演もたくさんあるが、ここでは一九六三年にシューリヒトがウィーン・フィルを振ったディスクを挙げたい。この長大な交響曲は、ゆっくりしたテンポで演奏すると八十分を優に超える。するとCD二枚組になってしまう。シューリヒト盤は七十分少々なので、一枚に充分収まる。演奏は言うことなし。加えて古き良き時代のウィーン・フィルの音色は、弦といいホルンといい、うっとりするほど美しい。とくに第三楽章は絶品。まず一枚という人にお勧めである。(2009年11月)