51 生涯に出会った最高のロックバンド

ネコふんじゃった
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 最初にザ・バンドの音楽に触れたのは、やはりボブ・ディランがらみだった。高校一年生の夏、ディランとザ・バンドのライブ・アルバムが発売になる。二枚組みのアルバムには、ザ・バンドを従えた力強いディランの歌と、それ以上に魅力的なザ・バンド単独の演奏が収められていた。その日から、ぼくは彼らのファンになった。

 この『南十字星』は高校二年生の冬に出た。炬燵だけの寒い部屋で、ぼくは毎晩繰り返し一枚のレコードを聴きつづけた。まるで自分だけのために作られたレコードのように感じられた。世界にはこんなに心にしみる、素晴しい音楽があるんだと思った。

 あとで知ったことだが、この時期の彼らは気持ちがばらばらで、解散は時間の問題という状態だったらしい。実質的に、これが最後のアルバムになってしまう。しかしそんな事情はまったく感じさせないくらい、作品としての完成度は高い。なかでも「オフェリア」と「アケイディアの流木」と「同じことさ」の三曲は、超名曲と言っていいと思う。

 五人のメンバーのうち、リチャード・マニュエルは一九八六年にフロリダのモーテルで自らの命を絶つ。「同じことさ」を熱唱していたリック・ダンコも、すでにこの世にいない。リヴォン・ヘルムは喉頭癌で再起不能を伝えられたが、奇跡的に復活して、最近も新作を出した(その後、2012年に亡くなる)。ロビー・ロバートソンは映画音楽やプロデューサーの分野で才能を発揮し、ガース・ハドソンは隠者のような活動をつづけているようだ。(2010年1月)