66)みんな一人になった

ネコふんじゃった
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 中学生になって、いわゆる洋楽を聴きはじめたころ、ビートルズもサイモン&ガーファンクルもすでに解散していて、メンバーたちはそれぞれにソロ・アルバムを発表していた。グループやバンドというプレッシャーから解放されたせいか、ソロになってからの彼らの作品には、どこかリラックスしてシンプルな作りのものが多かったように思う。

 ポール・サイモンのソロ・デビュー作も、そんな感じの作品。厳密には、彼の最初のソロ・アルバムは『ポール・サイモン・ソングブック』だけれど、コンビを解消して本格的なソロ活動を開始、という意味では、これを第一作とみなしていいだろう。全体に地味な印象ながら、「母と子の絆」や「僕とフリオと校庭で」といったヒット曲がちゃんと入っているあたりはさすがである。ジャマイカ録音の前者は、当時まだあまり知られていなかったレゲエのリズムを取り入れたもの。「ダンカンの歌」では、「コンドルは飛んで行く」でお世話になったトリオ・インカスが正式に迎えられている。他にも、聴くほどに味の出る曲がたくさん入っている。

 もともと広い音楽的な視野をもった人だが、ソロになったせいか、スタジオの選択やバック・ミュージシャンの起用など、より自由で軽いフットワークで音楽に臨んでいる。非ヨーロッパ音楽へのアプローチ、ジャズとの親和性、リズムへの強い興味、といったあたりに、『ひとりごと』や『時の流れに』、『グレイスランド』といった後の名作につながる姿勢が早くも見られる。(2011年4月)