71)ワールド・ミュージックへの扉

ネコふんじゃった
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 まだ「ワールド・ミュージック」などという言葉のないころから、ぼくにとってライ・クーダーは世界中の様々な音楽への扉を開いてくれた人だった。アメリカ音楽のルーツであるブルースやマウンテン・ミュージック(アパラチア山脈の周辺で発達した音楽)はもとより、チャーリー・パーカー以前の古いニュー・オーリンズのジャズや、ハワイ、メキシコ、カリブ海といったアメリカ周辺の音楽を、ポピュラー・ミュージックとして楽しく聴かせてくれたのがライだった。

 この『チキン・スキン・ミュージック』は一九七六年に発表された、ライの最高作とも言えるアルバム。フラーコ・ヒメネス(アコーディオン)とギャビー・パヒヌイ(スティール・ギター)という二人のミュージシャンとの出会いが、この作品の要になっている。音楽地図的にはメキシコとハワイに焦点を合わせたものということになるだろう。しかし他にもブルース、ゴスペル、カントリー、カリプソといった、それまで彼が取り組んできた様々な音楽が吸収され、消化されて、ライ自身の音楽になっている。

 どの曲も美しい。ぼくがとくに好きなのはアルフレッド・リードの「いつも優しく」。レコードではB面にあたる「スタンド・バイ・ミー」「黄色いバラ」「クロエ」とつづく流れもいい。

 ヴィム・ヴェンダースの『パリ、テキサス』など、映画音楽でも数々の傑作を残しており、『ブエナ・ヴィスタ・ソシアル・クラブ』以後は、プロデューサーとしての仕事も増えている。久しぶりのオリジナル・アルバムも充実しています。(2011年9月)