50 はじめて買ったボブ・ディランのレコード

ネコふんじゃった
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 ぼくたちが中学生のとき、「学生街の喫茶店」という曲がヒットしていた。歌っていたのはガロという名前の三人組。歌詞のなかに「片隅で聞いていたボブ・ディラン」という一節が出てくる。そのころから「ボブ・ディラン」という名前が気になっていた。

 はじめてディランのレコードを買ったのは中学三年生の冬。この『フリーホイーリン』である。彼にとっては二枚目のアルバムだが、一枚目はカバー中心なので、実質的なデビュー作と言ってもいいだろう。「風に吹かれて」「北国の少女」「激しい雨が降る」「くよくよするなよ」といった代表曲が入っている。いま聴くと、とてもいいアルバムなのだが、このあいだまでビートルズやレッド・ツェッペリンを聴いていた中学生には地味すぎた。ほぼ全曲、ディランの歌とギターだけ。それにときどきハーモニカが入る。これで同じ二千円(当時のLPレコードの値段)というのは、なんとなく釈然としない気分だった。

 それでも毎日、このレコードを聴きつづけた。せっかく買ったのだから、聴かなければもったいない。半ば義務的に聴いていた。するとだんだん良さがわかってきた。ぼくはテープに録音して、好きな女の子の誕生日にプレゼントすることにした。かなり勇気のいることだ。レコードのジャケット、雪のニューヨークを腕を組んで歩く二人。ディランと当時の恋人、スージー・ロトロ。いつかぼくたちもこんなふうになりたいね、という切ない思い。カセットテープでは伝わるはずもなかった。(2009年12月)