63)たまには現代曲を聴いてみる

ネコふんじゃった
この記事は約2分で読めます。

 このCDを買ったのは、キース・ジャレット(ピアノ)とギドン・クレーメル(ヴァイオリン)という気になるミュージシャンが共演しているから。しかし聴き進むうちに、演奏者もさることながら、これらの作品の作者に大きな魅力をおぼえはじめていた。

 アルヴォ・ペルトはエストニアの出身。一九三五年生まれというから、小沢征爾と同い年のれっきとした現代の作曲家である。現代音楽というと、わけがわからない、難しい、退屈……といったイメージを抱きがちだ。たしかに、そうした類の作品もあるが、ことペルトにかんしては心配御無用。明快な旋律と調性をもった、美しい作品がほとんどだ。聴きやすい点では、ヒーリング系の音楽としても通用するかもしれない。

 静謐な調べは、どこまでも透明で濁りがない。必要最小限の楽器と音符によって構築された作品は、ときに禁欲的な印象すら与える。どの作品も、深い精神性を感じさせるところが、この人の最大の美質だろう。合唱曲などでは、中世からルネサンスにかけての宗教音楽の影響もうかがえるが、複雑な音の響きは、やはりマーラー以降の音楽家だなと思わせる。

 そんなペルトの代表的な作品が四つ収められている。ピアノとヴァイオリンによるデュオからオーケストラまで、様々なタイプの作品があって飽きさせない。また表題曲では、ペルトと同時代の作曲家であるシュニトケが、プリペアード・ピアノを演奏しているのも興味深い。現代音楽への入口として、まずは最適な一枚と言えるだろう。(2011年1月)