アフター・コロナ

アフター・コロナ(5)

5  現在の新型コロナ・ウイルスにたいする鎖国状態は過渡的なものだと思う。民族や地理によって差異化された国民(ネーション)ではウイルスに対処できない。いずれはGAFAやBATの支援を受けた超国家機関がトランスナショナルに人々を管理することに...
アフター・コロナ

アフター・コロナ(4)

4  21世紀の現実世界を管理するのは、目下のところGAFAのような超国籍IT企業ということになりそうだ。将来はBATなども参入してくるかもしれない。だが、それらはあくまで表面的なことだろう。たしかに彼らは商売をしており、そのために個人情報...
アフター・コロナ

アフター・コロナ(3)

3  ぼくたちは「自分」を中心として、全球的に無際限につながっている。自己が世界の中心を占めているという全能感は、裏を返せば、その自己をめがけて世界が押し寄せてくるということでもある。あらゆるレイヤーからの膨大な情報が不断に、かつ瞬時に、世...
あの日のジョブズは

あの日のジョブズは(19)

19 孤独の惑星  エア・ビー・アンド・ビー(Airbnb)などのマッチング・サイトがやっていることは、「余っているモノ」と「必要な人」をいかに結びつけるかということだ。インターネットの登場によって、こうしたマッチングが格段に容易になった。...
アフター・コロナ

アフター・コロナ(2)

2 エア・ビー・アンド・ビー(Airbnb)などのマッチング・サイトがやっていることは、「余っているモノ」と「必要な人」をいかに結びつけるかということだ。インターネットの登場によって、こうしたマッチングが格段に容易になった。そこで様々なビジ...
あの日のジョブズは

あの日のジョブズは(18)

18 つながりっぱなしの世界  インターネットの起源は、ENIACなど現代型コンピュータと同じあたりまで遡ることができる。そしてENIACがそうだったように、インターネットもやはり軍、大学、民間企業という三つのグループのパートナーシップから...
あの日のジョブズは

あの日のジョブズは(17)

17 貧困をビジネスにする  アップルの製品の頭に「i」が付くようになったのは1998年のiMacからだ。このときのマーケティング戦略が「シンク・ディファレント」であったことを考えると、「i」は人称代名詞の「I」、つまり「自分」ということだ...
あの日のジョブズは

あの日のジョブズは(16)

16 消えた少年たち  オースティン・スコット・カードの小説『消えた少年たち』の主人公、7歳の少年スティーヴィは毎日学校から帰るとスクリーンの前に坐り込んでコンピュータ・ゲームばかりしている。彼には一緒にゲームをする友だちがいて、ジャックや...
あの日のジョブズは

あの日のジョブズは(15)

15 林檎をデザインする  1976年にウォズニアックとアップル・コンピュータを立ち上げ、新製品としてアップルⅡの設計に取り組んでいたときのこと、ジョブズはケースを通常の灰色をした不細工な金属ではなく、流麗なプラスチック製のものにしようと考...
あの日のジョブズは

あの日のジョブズは(14)

14 ウォーホル、ベートーヴェン、ドストエフスキー、そしてジョブズ  何年か前のこと、ある街のアップル・ストアに立ち寄った。新型のiPhoneが発売されたばかりだったのだろう。店内の壁一面に、色とりどりのスマートフォンが整然とディスプレイし...
あの日のジョブズは

あの日のジョブズは(13)

13 ホール・アースな問題  ロラン・バルトは写真の登場について、人々が鏡で見るのとは違ったふうに自分自身の姿を見るようになったのは、歴史的にはごく最近のことであると述べている(『明るい部屋』)。フランス人のニエプスによって写真が発明された...
あの日のジョブズは

あの日のジョブズは(12)

12 フレンドリーなコンピュータ  1906年に設立されたハロイド・コーポレーションはのちにゼロックスと社名を変え、その規模の拡大とともに幾つもの企業を買収していった。1969年にはコンピュータ会社を買収し、スタンフォードと隣り合うパロ・ア...
あの日のジョブズは

あの日のジョブズは(11)

11 カリフォルニア・ドリーミング  1960年代のはじめごろ、カリフォルニア南部ではサーフィンが大流行していた。サーファーたちの多くはバンドをやっていて、それなりに地元のファンをつかんでいたらしい。レコードとして残っているものはほとんどな...
あの日のジョブズは

あの日のジョブズは(10)

10 世界を変える   アップルが世界的なパーソナル・コンピュータ企業になったころ、ジョブズは「コンピュータが一人一台の世界になれば何かが変わるはず、10人に一台の世界とはまったく違ったものになるはず、10人に一台の世界とはまったく違ったも...
あの日のジョブズは

あの日のジョブズは(9)

9 シリコン・バレー  サン・ノゼからパロ・アルトをサウス・サンフランシスコまで60キロメートル以上にわたってつづくサンタクララ・バレーは、現在ではヒューレッド・パカードやインテルをはじめとして、アップル、グーグル、フェイスブック、ヤフー、...
あの日のジョブズは

あの日のジョブズは(8)

8 すい臓がんのイエス  神の子・イエスを生み出したのは、ローマ帝国に支配されたユダヤ人の絶望感だった。マルコたちによって書かれたイエスをめぐる物語が福音(良い知らせ)としてもたらされたころ、パレスチナはローマによって制圧され、ユダヤの民は...
あの日のジョブズは

あの日のジョブズは(7)

7 神をポケットに入れて  ジョブズのプレゼンテーションはすでに伝説になっている。製品の売上総額をプレゼンの時間で割った数字から「3分間で100億円を生む」とも言われた。1998年のiMac、2007年のiPhone、翌年のマックブック(M...
あの日のジョブズは

あの日のジョブズは(6)

6 クリスト・ドライブ2066  あたりは閑静な住宅地だ。平日の昼下がりで、人通りはほとんどない。目的のガレージはすぐに見つかった。郵便ポストに「2066」と書いてある。その横に「立ち入り禁止」の看板が立ち、「防犯カメラが作動しています」と...
ネコふんじゃった

55 こんなぼくですけど

ジャケットを思い浮かべるだけで、幸せな気分になれるレコードがある。このアルバムなどは、さしずめその最たるもの。ちょっと太目のお兄さんが、タキシードにけったいな蝶ネクタイをしめて、そろそろ床屋へ行った方がよさそうな髪には軽い寝癖が。いったい誰...
アフター・コロナ

アフター・コロナ(1)

1  一部の専門家たちにとっての「真理」が、ネットワークを通して世界中に拡散すると、現行のシステムを破壊しかねないほどのものになる。「正しいこと」が瞬時に世界中に拡散することで、ほとんど世界大戦並みの荒廃が引き起こされる。それがいまぼくたち...
あの日のジョブズは

あの日のジョブズは(21)

21 つながりっぱなしの世界  ここで少しインターネットの歴史をひもといてみよう。まずは自分の体験から書こうと思うのだが、あまりにも日常の一部になっていて、最初の出会いがどのようなものだったか思い出せない。何しろ紀元前の話である。おぼろげな...
あの日のジョブズは

あの日のジョブズは(5)

5 とりあえずのバイオグラフィー(後編)  アップルから追放されたあと、ジョブズはただちに新しい会社をつくる。アップルにたいする復讐心に燃えていたとも言われるが、ジョブズにしてみれば当然だろう。アップルを退社する際に、彼は5人の中核社員を引...
あの日のジョブズは

あの日のジョブズは(4)

4 ちょっと一休み  いやなやつだったらしい。正真正銘のクソ野郎と言う人もいる。ぼくのまわりにもいる。ジョブズの本を書いていると言ったら、「なぜあんなやつのことを書くんだ」と不思議そうな顔をされた。いまでは誰もジョブズのことなど気にかけてい...
あの日のジョブズは

あの日のジョブズは(3)

3 とりあえずのバイオグラフィー(前半)  というわけで、最初にジョブズの簡単なバイオグラフィーを見ておこう。基本的にはオフィシャルな自伝とされているウォルター・アイザックソンの『スティーブ・ジョブズ』に依り、さらに長年にわたりジョブズの取...
あの日のジョブズは

あの日のジョブズは(2)

2 Where Are You ?  男を探している。どこにいるのかわからない。どこを探せばいいのか見当もつかない。重要なやつなのか? おそらくキリスト教徒にとってのイエスと同じくらい重要だ。イエスと同じように、彼も後の人々からは歴史を大き...
あの日のジョブズは

あの日のジョブズは(1)

1 ジョブズの写真  父親はシリアからの留学生だった。母親はドイツ系移民の厳格な家庭に育った。ウィスコンシン大学の大学院生だった二人のあいだに生まれた子どもは、最初から養子に出されることがきまっていた。こうして彼の姓は「ジョブズ」になる。 ...
ネコふんじゃった

54 それから先のことは

昨年、彼が亡くなったあと、なんとなく聴きたくなったのが「シンガプーラ」だった。熱い風かき回す、羽ひろげる扇風機、西、東、血が混じる、あの子の目に魅せられた……。その「シンカーブラ」を収録した本アルバムは、一九七六年にアラバマ州はシェイフィー...
ネコふんじゃった

53 最高にかっこいいロック・アルバム

フランク・ザッパというと奇人変人のイメージが先行して、とくに日本では、彼の音楽が正当に評価されていない気がする。しかしアルバムを聴いてもらえばわかるとおり、非常に高い音楽性をもった、天才的なミュージシャンである。  あまりに才能があり過ぎる...
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「今日のさけび10月号、11月号」電子本同時発行。会員登録なしでどなたでも見れます

「今日のさけび10月・11月号」の電子本同時発行しました。もちろんセカチュー・ボイス限定です。市販されておりません。どなたでも見ることができますこちらからどうぞ
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ぼく自身のための広告(28)

28 父の杖  86歳になる母が、もう足が弱ってお四国の巡礼にも行かれないから、長年使ってきた杖を結願のお寺に奉納してきたいと言う。7年前に亡くなった父の杖もそのままになっている。じゃあ二本まとめてお納めしてくるか、ということになった。幸い...
ネコふんじゃった

52 スティルス、才気爆発の一作

かつてのバンド仲間だったニール・ヤングと、なにかにつけて比較されることの多かったスティーブン・スティルス。ぼくの贔屓はニール・ヤングだったけれど、才能があるのはスティルスだと思っていた。ギターもキーボードも上手いし、ハスキーな独特の声で、し...
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51 生涯に出会った最高のロックバンド

最初にザ・バンドの音楽に触れたのは、やはりボブ・ディランがらみだった。高校一年生の夏、ディランとザ・バンドのライブ・アルバムが発売になる。二枚組みのアルバムには、ザ・バンドを従えた力強いディランの歌と、それ以上に魅力的なザ・バンド単独の演奏...
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ぼく自身のための広告(27)

27  ぼくのボブ・ディラン  ときどき遊びに行っているウクレレ教室で発表会をやることになった。お酒を飲みながら一人一曲ずつ演奏して歌う。ぼくはギターの弾き語りでしっとりと「イエスタデー」などやって、ご婦人方の涙腺をくすぐるつもりだ😁。教室...
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50 はじめて買ったボブ・ディランのレコード

ぼくたちが中学生のとき、「学生街の喫茶店」という曲がヒットしていた。歌っていたのはガロという名前の三人組。歌詞のなかに「片隅で聞いていたボブ・ディラン」という一節が出てくる。そのころから「ボブ・ディラン」という名前が気になっていた。  はじ...
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「今日のさけび8月号、9月号」電子本同時発行。会員登録なしでどなたでも見れます

世界の中心で、愛をさけぶの作家、片山恭一の毎日発行のエッセイを月ごとにまとめました。
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49 一瞬のアイコン

高校を卒業するまで住んでいた街には、レコード屋が二軒あった。中学二年生の秋、これら二つの店に、突如として巨大なポスターが現れた。しかも店内のあちこちに、中吊り広告のように何枚も吊るしてある。それがこのT・レックス、『スライダー』のポスターだ...
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ぼく自身のための広告(26)

『資本論』を通読したのは十代の終わりだったと書いたけれど、『源氏物語』も全巻を通して読んだのは二十代の終わりごろ。奥さんが持ってきた本のなかに、中央公論社から出ていた新書版の谷崎源氏があり、全10巻で別巻が1冊付いている。これを毎日少しずつ読んだ。
ネコふんじゃった

48 こんなんジャズじゃない、と言われたものだけど

ジャズを聴きはじめたころは、CTIというレーベルをなんとなく馬鹿にしていた。ブルーノートなどの由緒正しいジャズ・レーベルにくらべると、ちょっと軽いというか、ストリングスを多用したサウンドをはじめ、ジャケットも含めてムードミュージック的なとこ...
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ネコふんじゃった

47 大地の声に酔う

ミルトン・ナシメントの名前をはじめて目にしたのは、ムーンライダーズの『ヌーヴェル・ヴァーグ』というアルバムに彼の曲が入っていたから。同じころ、ウェイン・ショーターの『ネイティブ・ダンサー』を聴いて、このブラジルのミュージシャンに興味を抱くよ...