なお、この星の上に(28)

 煌々と照る月の光で、庭は隅々まで明るかった。地面を這っている小さな虫の姿まで見えそうだ。風のない静かな夜だった。木の葉も草も眠り込んだように動かない。顔を上げると、暗い天空に輝く星たちだけが小さく震えている。  夜中に […]

なお、この星の上に(27)

13   太陽の光が触れるのを感じた。空は端から端まで青い。山の輪郭は鮮明で、近くに生い茂る草木は、葉の一枚一枚が数えられるほどくっきりと見えている。祖父の話を思い出した。何もかもが驚くほどはっきり見える日がある。普段は […]

なお、この星の上に(26)

 大人たちが帰ってしまうと、居間には健太郎と父の二人になった。自室に引っ込むタイミングを逸したこともある。加えて健太郎には、父が自分と話をしたがっている気がした。とくに何を話題にするわけでもない。ただ学校のことなどをとり […]

なお、この星の上に(25)

12  長い時間、男たちは難しい顔をして黙り込んでいた。家のなかはひっそりと静まり返っている。庭の動物たちまで息を潜めているみたいだった。卓を囲んでいるのは、仁多さん、岩男さん、源さん、健太郎の父という山参りのメンバーで […]

第7回 フィクション(3)

②童話性  つぎに宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』を見てみましょう。主人公の名前はジョバンニ、親友がカムパネルラで、ザネリという同級生がいます。「いったいどこの話だ?」と思いますよね。ジョバンニはお父さんが不在で、お母さんは病 […]

第6回 フィクション(2)

 前回にひきつづきフィクションについてお話します。フィクション(虚構)の反対はファクト(事実)です。ノンフィクションでは、あくまでファクト(事実)が重視される。事実によって書き換えられ、更新されていきます。新しい事実によ […]

12 天才たちの青春賦

 季節が冬に向かう時期、朝起きてまず、このCDをかける。一曲目の「ブライト・サイズ・ライフ」を聴くと、今日もいいことがありそうな気がする。いや、今日もいい一日にしようと思う。  パット・メセニーとジャコ・パストリアス。二 […]

第5回 フィクション(1)

 これから何回かにわたって虚構、つまりフィクションの話をしようと思います。大きな本屋さんへ行くと、フィクションとノンフィクションというふうに棚を分けているところがありますね。小説はフィクションです。では、フィクションとは […]

なお、この星の上に(24)

 稜線が広くなっていた。右と左に分かれた片方が、東の尾根に向かってせり上がっている。しばらく縦走して東側の尾根に取り付く。その前に弁当を食べることにした。昼にはまだ少し早かったが、夕方には新吾の次兄のところへ戻り、もう一 […]

なお、この星の上に(23)

11  ゆるやかに傾斜した地面を、シダや熊笹などの下草が覆っていた。山仕事をする人たちが使っていたものだろうか。古い道らしく踏み跡はほとんど消えかかっている。まわりはブナやクヌギなどの原生林だった。このあたりの森は昔から […]

第4回 空間

 ここ何回か、小説の構造ということで授業を進めています。最初に語り手についてお話ししました。幾つかの作品の冒頭を引用しながら、それぞれ語り手のタイプが異なることを見てきました。カフカの『変身』のように、現実には起こりえな […]