まぐまぐ日記・2012年……(2)

まぐまぐ日記
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1月9日(月)曇り

 午前中、今年最初の気功。祭日だというのに、教室は休みではないのだ。Y先生も生徒のみなさんも、やる気満々である。

 午後から大阪へ帰る長男を、家族で博多駅まで見送る。途中、マリンメッセの前を通ったら、成人式に出席した若者で溢れていた。自治体主催の成人式なんて、いい加減にやめてはどうだろう。なんの意味もない。道路清掃か何かのボランティア活動にした方が、よっぽどいいと思う。おかげで車が渋滞して、予定していた新幹線に乗りそこなったではないか。

 帰りに、バスセンター・ビルの紀伊国屋に寄る。いまや福岡紀伊国屋は、ここ一店だけになってしまった。一時期は3店もあったのに。久しぶりに来たが、まったくなんの魅力もない店になっていた。やる気が全然感じられない。ただ配本された本を並べているだけ。

 紀伊国屋は地元の作家を大切にしてくれる書店で、ぼくもはじめて本を出したころから、いろいろとお世話になった。無名の作家を、なんとかバックアップしようという熱意を感じた。棚の作り方もヴィヴィッドで、書店員さんたちの創意工夫を感じたものだった。こんな店になってしまったのかと思うと悲しいが、二度と足を運ぶ気になれない。

1月9日(火)曇り

 午前中、進まない小説を少しだけ進めて、午後は講義の準備。最後の講義なので、近代文学とはなんだったのか、といったテーマで話そうと思う。

 夕方、年末に行きそびれた床屋へ行く。子どものころは散髪が嫌いだった。いまは髪が伸びると気持ち悪い。歳をとった証拠かも。

 夜はDVDでテリー・ギリアムの『フィッシャー・キング』を観る。やっぱりギリアムの映画って面白い。ロビン・ウィリアムズが好演。『未来世紀ブラジル』のファンにはお勧め。

1月10日(水)曇り

 今日で九産大の講義も終わり。4月まで長い春休みに入る。来年度も前期は世界文学を、後期は日本文学を扱う予定。今年ははじめてで、不本意な点が多かったので、二年目は少し自分らしい講義をしたいと思っている。

 鶴見俊輔・小田実『オリジンから考える』(岩波書店)を読んでいたら、小田実のつぎのような発言が目にとまった。「憲法でいちばん大事なのは、二十五条、二十四条の、具体的に小さい人間の生き方が書いてあるところじゃないですか。そして、そのためには九条が必要なんです。戦争があったら困るでしょう。そして、それだけでは駄目なんです。世界全体が変わらなきゃ駄目でしょう? それが、前文なのです。」

 二十五条とは、言うまでもなく生存権の条項だ。「すべての国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」いまの政府は憲法違反であると、あらためて思う。ついでに前文も読んでみよう。「われらは、平和を維持し、専制と隷属、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めている国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思う。」

 文句つけようがない。誰が作ろうと、そんなことは問題ではない。アメリカに押しつけられたなどというのは、取るに足らないことだ。

1月12日(木)曇り

 午後から角川映画『源氏物語』を観に行く。全然期待していなかったけれど、意外と良かった。登場人物の心理的葛藤を含めて、モダンにわりきって描いているのが成功していると思う。また東山紀之をはじめ、若い役者さんたちも熱演だ。とくに田中麗奈の六条御息所は迫力があった。

 この映画、脚本(原作)もいい。冒頭で藤原道長が紫式部をレイプ(?)するシーンで、道長に「わたしは何をしても許される身だから、騒いでも無駄だよ」と言わせている。これは小説のなかでは、光源氏が朧月夜に言わせる台詞だったと思う。うまい使い方だと感心した。

 現代語訳はたくさん種類が出ているが、ぼくがいちばん好きなのは谷崎訳である。ちょっと読みにくいが、典雅でしめやか、われわれがイメージする『源氏物語』の世界に近い気がする。手っ取り早く全体像をつかむには、与謝野訳がいいだろう。

 夜は友納先生、大学の先輩の今長谷さん、同級生の木村君、浜崎君と新年会。不思議なメンバーだけれど、福岡在住で普段から行き来のある人が集まった。ぼくは個人的に友納先生の話を聞きたかった。酒の席だから突っ込んだ話はできなかったが、それでも充分に刺激を受けた。マルクスの『経済学・哲学草稿』を再読しようと思った。

1月15日(日)曇り

 朝5時半に起きて、次男を車で空港まで送っていく。東京のビッグサイトで催される就職説明会へ参加するためだ。ぼく自身は久しく東京へ行ってない。その間にフランス、韓国、中国、タイ、オーストラリアへは行ったのに。

 夜はDVDで『彼女は最高』を観る。このDVD、ダニー・ボイルの『普通じゃない』が観たくて注文したら、2枚組セットになっていてついてきたのだ。キャメロン・ディアスって好きな女優さんじゃないし、全然期待していなかったけれど、なかなか面白かった(最近は、こういうのが多い)。音楽をトム・ぺティが担当している。久しぶりに彼らのCDが聴きたくなった。