まぐまぐ日記・2011年……(12)

まぐまぐ日記
この記事は約5分で読めます。

11月21日(月)曇り・晴れ

 現地時間の午前4時45分、ケアンズ空港着。日本との時差は1時間なので、実質の飛行時間は約8時間。この間に、二回機内食が出るのにはまいった。しかも一回目は午後10時半で、二回目は午前3時半なので、あいだは5時間くらいしかない。次回から機内食は断ろう。

 今回の旅行のお世話をしていただいているジャックさん(というのは現地での愛称で、埼玉県出身のれっきとした日本人だ)が出迎えてくれる。彼の車でホテルへ。このたびの宿はShangri-La Hotel。ビーチに面した、とても快適なホテルである。午前中は部屋で休息。

 正午にジャックさんとロビーで待ち合わせて、まず両替を済ます。オーストラリア・ドルはレートが87円くらいで安定している。実体経済がしっかりしている証拠だ。昼食は飲茶。ジャックさんと別れて午後は市内を散策。ケアンズの観光施設は、ホテルもショップもレストランも、ほとんど半径500メートルくらいの区域に集中している。たいていのところへは15分もあれば歩いて行ける。Cairns Centralというショッピング・センターのカフェでカプチーノを飲む。ちょっと甘みがあって美味しい。

 古本市をやっていたので覗いてみると、Bruce Chatwinの書簡集(“Under The Sun”というタイトル)を5ドルで売っていた。彼の『ソングライン』という著作は、ぼくがオーストラリアのアボリジニに興味をもつきっかけをつくってくれたものだ。はじめてオーストラリアへやって来た初日に、日本では見たこともない彼の書簡集を見つけるのは、なんだか不思議な縁のような気がして、550ページもある大型本でかなり重いけれど買ってしまう。

 街をうろうろして、ふらりと足を踏み入れたギャラリーで、アボジニアル・アートの小品を何点か買う。ドリーム・タイムやトーテミズムとともにアボニジアル・アートのことを知ったのも、チャトウィンの本によってだった。ビーチに出てTrinity Bayに面したボードウォークを散歩。「危険!ワニに食べられちゃうぞ」という遊泳禁止の看板があちこちに立っている。このあたりでもワニが出るのだろうか。砂浜には野鳥がたくさんいる。途中にラグーン・プールやバーベキュー・エリアがあり、ワニが出るというわりには、動物も人ものんびりしている。ちなみにオーストラリアでは、野外でアルコールを飲むことは禁止されている。だからバーベキューもアルコール抜きなのだ。でも飲酒運転(酒気帯び運転)はOKらしい。その国の事情があるのだろうけど、文化の違いを感じる。

 夕食はジャックさんが紹介してくれたLa  Fettuccinaというイタリアン・レストランで。前菜と二種類のパスタを、家内とシェアして食べる。平たいパスタにからめてあるクリームソースが美味しいので、パンをもらって残さずに食べる。ビール一杯とグラスで白のハウス・ワインを。いずれも美味。

11月22日(火)晴れ

 午前7時起床。ポートのカフェで朝食。「ショート・ブラック」はエスプレッソのことで、普通のコーヒーは「ロング・ブラック」というらしい。コーヒーもサンドウィッチも値段のわりに美味しくない。ホテルの朝食ビュッフェは32$。ぼくも家内も朝はあまり食べないので、朝食に三千円近い料金を取られるのは馬鹿らしい。明日からはスーパーでパンとチーズと果物を買って、ホテルの部屋で済ませよう。

 8時半、いよいよミコマス・ケイ・クルーズへ出発。今回の目的地、Michaelmas Reefはグレート・バリア・リーフのなかに浮かぶ小さな島で、ケアンズから船で2時間くらいのところにある。島というよりも砂州という感じだ。真っ白い砂は、みんなサンゴが死んで砕けたものらしい。手つかずの自然を保つために、人間の出入りは厳しく制限されている。おびただしい数の野鳥が生息しており、その繁殖のための特別保護地区にもなっている。

 さっそくスノーケリング。波打ち際から水に入ると、足元をたくさんの魚たちが泳いでいる。種類にも数にも圧倒される。ほとんど荒らされていないので、人間を恐れずに近寄って来る。とても親密な気持ちになる。人間と魚は、こんなに仲良くなれるんだ。沖へ少し泳いでいくと、眼下に様々なサンゴがあらわれる。サンゴ礁の海に潜るのは、生まれてはじめてなので、ただただ感動してしまう。海中に射し込む光が、海底の白い砂に反射して美しい。

 船に戻って昼食。シーフードをふんだんに使ったランチは、船の厨房で作られたもので、とても美味しい。昼食も早々に、ぼくと家内は、午後いちばんのボートで再び島へ。だいぶ要領がわかってきたので、珍しいサンゴや魚たちを探して、どんどん泳ぎまわる。ふと、横を見るとウミガメが一緒に泳いでいる。両手で輪をつくったくらいのサイズ。まだ子どもだ。まったく逃げる気配がないので、ぼくも一緒についていく。ウミガメは伸ばした首で左右を見ながらゆっくり泳いでいく。ときどきサンゴの下を覗いて、餌を探しているらしい。丸い真っ黒な目がかわいい。なんて愛らしい生き物なんだ。いつまでも泳いでいたい。このままリーフの外まで泳いで行ってしまいたい。帰って来られなくなっても後悔はしない……気がする。

 再び二時間の船旅でケアンズに。5時半くらいに港に着く。夜はジャックさんに紹介してもらったHog’s Breath Caféへ。豚の息? どういう意味だろう。詳細はわからないが、とにかく美味しいオージービーフを食べさせてくれる。とくにプライム・リブ・ステーキは絶品。トラディショナル・カットという大きめのサイズを、家内と二人でシェアして食べるとお腹がいっぱいだ。今日は料理にあわせて赤ワインをオーダーする。いちばん安いのはボトルで20$くらい。このくらいの値段のものでも充分に美味しい。店で買えば千円くらいだろう。フランスやイタリアもそうだけれど、ワインが安くて美味しいのは羨ましい。輸入しているからしょうがないのだけれど、日本のレストランのワインは高過ぎる。フレンチでもイタリアンでも、下手をすると料理より高くなってしまう。そのわりにたいして美味しくないしね。だからワインは通販で注文して家で飲むことが多い。ケアンズまでやって来て、貧乏くさい話になってしまったな。