小説のために(第十話)

 ブラインド・ウィリー・マクテルの「Statesboro Blues」を聴く。オールマン・ブラザーズ・バンドで有名な曲だけれど、同じ曲と言われても同じに聞こえない。ウィリー・マクテルの原石に磨きをかけてスリリングなロック […]

小説のために(第九話)

6  ナチスの政権下、ヒトラーをはじめゲーリング、ヒムラーなどの閣僚が、フルトヴェングラーの指揮するベートーヴェンの第九交響曲を聴いて、全員が涙を流すほど感動したという。ゲッペルスが日記に記している。作り話ではないだろう […]

医学の常識・非常識(1)

(1)がん検診をめぐる常識・非常識 【前立腺がん】 ・アメリカで実施された比較試験(約8万人の男子が対象)では、無検査・放置群とPSA(前立腺特異抗原)検診とを比べた結果、検診群の前立腺がん死亡数は減らなかった。(JNC […]

小説のために(第八話)

5  円空仏も木喰仏も、多くの人の手に触られ、つるつるになったり、すり減ったりしているものが多いという。距離を置いて眺めるのではなく、手で触って感触を楽しむ仏像。親しみがあって身近。村人が具合の悪いときに借り出し、枕元に […]

なお、この星の上に(25)

25  久しぶりの帰郷には通夜か葬式の気分が伴った。故郷といっても、帰る家もなければ存命の者もいない。十年ほど前に父が亡くなったあと、一人になった母を呼び寄せて夫婦で面倒をみていた。その母も数年前に施設で亡くなっている。 […]

なお、この星の上に(24)

24  その日も、朝の最初の光が巣のなかに差し込んできた。切り立った崖の岩棚に、木の枝を集めて作った巣のなかで、イヌワシはゆっくり立ち上がると、黒い褐色の身体を朝の光に晒した。首から背にかけての羽毛が赤みを帯びた黄色に輝 […]

なお、この星の上に(23)

23  眠りと目覚めの境界がはっきりしなかった。何度も目覚めては、すぐにまた眠りに落ちた。目覚めは眠りのようであり、眠りのなかにも覚醒があった。そんなことを繰り返しているうちに、自分がどこにいるのかわからなくなった。病院 […]

なお、この星の上に(22)

22  濃い霧のようなものが流れていた。その霧を手で払いながら進んだ。目の前の景色がはっきりしない。森のなかを進んでいるみたいだった。ときどき近くに黒い樹影がぼんやり現れる。太陽は出ていないらしい。夜とも昼ともつかない森 […]

なお、この星の上に(21)

21  山狩りの計画は綿密に立てられた。どの区域を狩るか。そこに本当に野犬が潜伏しているのか。何人かの猟師たちが山に入り、野犬たちの残した痕跡を調べることになった。足跡や糞、野犬たちが襲ったと思われる動物の死骸、さらには […]

なお、この星の上に(20)

20  鉱山で働いていた男が酒を飲んで、ふらふらと宿舎を出たまま帰らなかった。どこか近くで酔いつぶれているのだろう。この季節、一晩放置すれば夜の冷気が体温を奪い生命にもかかわる。仲間たちは手分けしてあたりを探したけれど見 […]

なお、この星の上に(19)

19  昭が母親とともに引っ越すことになった。伝え聞いたときには唐突な感じがしたが、どうやら自宅の火事と、その後の一連の放火事件を憂慮した父親の意向らしかった。自分の携わっている仕事が近隣の者たちの反感を買っているとすれ […]