フィル・スペクターの10曲
お待たせしました。お待ちになっていないかもしれないけれど、フィル・スペクターのベスト10を発表させてもらいます。選曲していて思ったんだけど、よほどへそ曲がりな選び方をしないかぎり、半分くらいは重なるんじゃないかな。影響を受けているミュージシャンが多いし、ほとんどアメリカン・ポップスのクラシックになっていますからね。
- To Know Him Is To Love Him (The Teddy Bears) 1958
- There’s No Other Like My Baby (The Crystals) 1961
- Why Do Lovers Break Each Other’s Hearts? (Bob B.Soxx And The Blue Jeans) 1962
- Da Doo Ron Ron (The Crystals) 1963
- Wait Till My Baby Gets Home (Darlen Love) 1963
- Be My Baby (The Rontts) 1963
- Then He Kissed Me (The Crysrals) 1963
- Do I Love Me? (The Ronetts) 1964
- Unchained Melody (The Righteous Brothers) 1965
- This Could Be The Night (The Modern Folk Quartet) 1965
1は最初のNo.1ヒット。レスター・シルとフィレスをはじめる前で、Doreというレーベルから出ている。つづく2がフィレス最初のシングルとなる。この当時のクリスタルズのリード・ヴォーカルはダーレン・ラブだと思う。3になるとエンジニアのラリー・レヴィン、アレンジャーのジャック・ニッチェという「ウォール・オブ・サウンド」の立役者たちが揃う。そして4、スペクター・サウンドというとこれを思い浮かべる人が多いのではないだろうか。大瀧詠一「ウララカ」の元歌としても有名。リード・ヴォーカルはラ・ラ・ブルックスになっている。「Be My Baby」同様、ハル・ブレインのドラムが強烈。
5、6、7とフィレスの代表曲がつづく。こうしてみるとフィレスの全盛期が1963年だってことがよくわかる。この年は、他にもダーレン・ラブの「A Fine,Fine Boy」や「(Today I Met) The Boy I’m Gonna Marry」、ボブ・ソックスの「Not Too Young To Get Married」、ロネッツの「Baby,I Love You」などがヒットしている。ちなみに前年の1962年にはクリスタルズの「Uptown」と「He’s A Rebel」(2曲目のNo.1ヒット)、「He’s Sure The Boy I Love」、ボブ・ソックスの「Zip-A-Dee-Doo-Dan」などがある。
1964年の8は、ぼくがいちばん好きなスペクター作品。長めのイントロが終わってメロディが走り出すところは、何度聞いても胸がキュンとしてしまう。「Be My Baby」もそうだけど、ちょっと癖のあるヴェロニカのヴォーカルが曲調にぴったりだ。この年、ロネッツは「Walking In The Rain」をヒットさせていて、こちらもいい。64年ではダーレン・ラブの「Stumble And Fall」も捨てがたい。ライチャスの9は1965年、前年には「You’ve Lost That Lovin’Feeling」がNo.1になっているのだが、今回はこちらを選んだ。10はニルソンの曲ってとこがミソ。山下達郎による秀逸なカバー・バージョン(『Big Wave』収録)も忘れられない。そして1966年のIke & Tina Turner「River Deep,Mountain High」あたりがフィレスの最後のピークになるだろう。
それにしてもいい曲が多いですね。聴くたびに幸せな気分にしてくれる。スペクターの音楽をぼくたちに(かなり屈折したかたちで)紹介してくれた大瀧詠一さんにあらためて感謝です。(2019.9.15)