ぼくの好きなレゲエ・アルバム
去年の「今日のさけび」で7月に公開したもの。写真付きで再集録します。アイキャッチにはアナログ盤の写真を使いたかったんだけど、レゲエのレコードは全部処分して一枚も手元になかった。CDで買いなおしたので、もういらないと思ったのかなあ。残念。
今日は日曜日なので音楽の話を。北部九州は梅雨入りが遅かったうえに、梅雨なのか明けたのかわからないような天気がつづいているけれど、ぼくの音楽鑑賞は夏が待ちきれない気分で、すでにニューオリンズからサルサ、レゲエへと移ろっている。そこで本日は好きなレゲエのアルバムを発作的に5枚選んでみよう。
- Bob Marley & The Wailers “Catch A Fire” (1972)
- Jimmy Cliff “The Harder They Come” (1972)
- Jimmy Cliff “In Concert” (1976)
- Matumbi “Seven Seals” (1978)
- Third World “Journey To Addis” (1978)
これは意外と簡単だった。というのもぼくがレゲエを聴いていたのは主に高校生から大学生のころで、年代でいうと1976年~1978年くらいだ。名盤もこのあたりに集中しているように思う。最初に聴いたのはボブ・マーレイの『ライブ』で、ずっと愛着があったけれど、『キャッチ・ア・ファイア』のデラックス・エディションが出てからは、こちらがいちばん好きなアルバムになった。それまで聴いたことのなかったジャマイカン・ヴァージョンが素晴らしいのである。もちろんマーレーはソロもいいのだけれど、やっぱりピーター・トッシュとバニー・ウェイラーと一緒にやっていたこの時代は特別ですね。
ジミー・クリフの『ハーダー・ゼイ・カム』は大学2年生のときに映画を観た。ほとんど筋はおぼえていないけれど、クリフの扮するアイヴァンが最後に射殺されるシーンのジャマイカの海は美しかったなあ。このアルバムはベスト・オブ・ジミー・クリフと映画のサウンド・トラックの両面をもっている。クリフの曲はどれも彼のベストと言えるものだが、それに加えてメイタルズやメロディアンズの曲が素晴らしい。レゲエで最初に聴くべき一枚は、間違いなくこれだろう。
そのジミー・クリフのライブは、曲目やバックのミュージシャンの演奏を含めて最高のパフォーマンスを記録したものだ。ジミーの前向きな歌声は、ぼくの暗い学生時代の一つの光だった。う~ん、あのころは暗かったなあ。みんな過剰な自己を持て余して、酒を飲んだり女に溺れたり精神を病んだり内ゲバで殺されたりしていた。当時はそんなものかと思っていたけれど、かなり異常な時代ではあったようだ。ぼくがひとまず正気を保っていられたのは音楽のおかげかもしれない。音楽こそ善なるものと思えた。とくにジミー・クリフの歌声は善良さと高潔さを感じさせて、そのころ借りていた3畳一間の殺伐とした部屋で聴いてもなんだかほっとしたものだ。
マトゥンビのこの超名盤が品切れどころか、カタログにも載っていないのはいったいどういうことか! 誰かの陰謀なのか? デニス・ボーヴェルが何をしたっていうんだ? 聴いてもらえないんじゃあしょうがないけど、「Guide Us Jah」とか「Hook Deh」とか「Rock」とか8曲しか入っていないんだけど、みんな心に残る名曲である。とにかくどこかの誰か、一日も早く復刻してほしい。マトゥンビは「Ordinary Man」とか入っているつぎの『ポイント・オブ・ヴュー』もいいです。これも品切れだって? どうなっているんだろう。
サード・ワールドはアイランド時代の3枚に尽きる。コロンビアに移籍してからのものには聴くべきものはほとんどない。アビシニアンズやバーニング・スピアのカバーを含む1枚目も初々しくていい。完成度の高さでは2枚目の『華氏96度』だろう。でも、ぼくはいくらかポップになった3枚目がいちばん好きだ。「Cold Sweat」「Cool Meditation」「African Woman」と素敵な曲が入っている。
しかし、こうやって5枚選んでいるうちに、他にも好きなアルバムがたくさんあることをどんどん思い出して困っている。スティール・パルスの「Handsworth Revolution」とかリントン・クウェシ・ジョンソンの「Bass Culture」とか UB40の「Signing Off」とか。アスワドやブラック・ウルフーやリコ・ロドリゲスやジュニア・マーヴィンやジャスティン・ハインズや。そうこうしているうちにデズモンド・デッカーはどうしたということになり、バーニング・スピアやオータスタス・パブロなんていう懐かしい名前を思い出してしまう。おっと、リー・ペリーやU・ロイも忘れてもらっちゃ困る。というわけで、いや~、レゲエって奥深く広い音楽なんですね。それでは、さよなら、さよなら。(2019.7.7→2020.8.23)