まぐまぐ日記・2011年……(9)

まぐまぐ日記
この記事は約3分で読めます。

11月1日(火)晴れ

 九州電力が停止中の玄海原発を再稼働させるというので気分が悪い。本来なら、東電や九電の製品(電力)をボイコットすべきなのだが、ぼくたちは電力会社にたいして消費者として振舞うことができない。代替手段として、東芝、三菱、日立の全製品をボイコットすることにした。問題だらけの原発を海外へ輸出するつもりらしいので、もはやこれまでと見切りをつけた。環境にやさしい企業などありえない。そんなデタラメに耳を貸すよりも、原発をやっているか否か、軍需産業にたずさわっているか否かで、会社や製品を選ぶべきだと思う。

 それにしても、ぼくたちの人生で恐ろしいことの一つは、九電の社長みたいになってしまうことだ。彼は自らを辱めることによって、すべての人間を辱めている。

11月2日(水)曇り

 夜になって、大阪で就職している長男がひょっこり帰ってくる。休みがとれたので日曜日までいるという。おみやげに「山崎シェリー・カスク」というのをくれた。シェリー樽で熟成した40度のシングルモルトだ。こいつはなかなかすごい。ストレートでやると病みつきになりそうだ。近くに山崎の蒸留所があるので、ときどき行っているらしい。長男はパナソニックに勤めている。パナは原発をやっていないので、いまのところボイコットの対象とはしていない。

11月3日(木)曇り・晴れ

 今日は29回目の結婚記念日。長男も帰って来たので、夜は久しぶりに家族四人で食事に出かける。その前にぼくは家内に付き合って、小原流の華道展を見た。これはなかなか面白かった。お花って、こんなことになっているんだ! 要するに、草花を使った造形美術なのですね。家元は21歳のやさ男。女性信者も多いのだろう。

 今日は文化の日。例によって、馬鹿な文学者がうれしそうに勲章をもらっている。みっともないなあ。どんな権威にもすりよらないのが、文学者の唯一のとりえだろうに。頭がいいとか語学ができるとか、そんなことはちっとも本質的ではない。文学の質をきめるのは、信念とこころざしだぜ。

11月5日(土)雨・曇り

 父方の従兄の長男の結婚式のため、午後から延岡へ向かう。在来線を乗り継いで四時間半。日豊本線は時間がかかるのだ。でも本を読みながら、のんびりとした旅だった。車中、滝口康彦の『一命』(講談社文庫)を読む。最近公開された映画とタイアップして編まれたもの。六つの短編が収められているが、どれも面白い。武士社会の不条理さと残酷さを描いて見事である。

11月6日(日)曇り

 午前11時より神前にて挙式。そのあと披露宴に移る。従兄は延岡で鉄鋼関係の工場を経営している。もう三十年以上になるという。このたび結婚する長男の名前は「鋼平」だ。従兄はぼくより十歳ほど年上だから、そろそろ定年である。いまでは長男と次男が、ほとんどの仕事をやってくれているらしい。

 父親の大きな役目の一つは、子どもに仕事を残すことである、と言った人がいた。農民は田畑を残す。漁民や船や漁具を残す。職人は道具や技術を残す。かつての日本の社会はそのようなものだった。「家業」が廃り、多くがサラリーマンになってしまうと、日本人の考え方も変わってきた。仕事を残すことができないので、子どもに教育を身につけさせる。ぼくなどもそうやって子どもを育ててきたふしがある。でも現在、多くの若者が定職に就けずにフリーターなどで糊口を凌いでいる。あるいは仕事を見つけに海外へ出ていく。どこかで日本の社会は間違ってしまったのだ。