なお、この星の上に(34)

 人里離れたところにひっそりと建つ避病院は、まわりの自然と一つになってほとんど野生化しつつあった。隔離されていた病人の多くは、戦争中にどこかへ移送されたというが、村の人たちはそれについて多くを語りたがらなかった。とりわけ […]

なお、この星の上に(33)

15  翌日、午前中で学校が終わると、健太郎は急いで家に帰った。いつもは一緒に帰宅する新吾や武雄には声をかけなかった。靴箱のところで会った豊が、来週からは昭も学校へ来るそうだと言った。豊はそうした情報に聡かった。おそらく […]

なお、この星の上に(32)

 夜が明けるころには雨は上がっていた。日課の乳搾りのために表に出ると、地面の土は濡れてさえいない。不審に思って朝食のときにたずねてみた。 「雨か?」母親は怪訝な顔をした。 「降らんかったか」 「降ってくれるとええのやがな […]

なお、この星の上に(31)

 家に帰ると、妹の綾子が「ガーグー」が捕まったと言った。夕食の時間だった。家族の全員が揃った食卓で、妹は健太郎に向けてその話を持ち出した。昭の家に火をつけた疑いだという。町の警察署から刑事が来て、ガーグーを引っ張っていっ […]

なお、この星の上に(30)

 翌日、学校が終わったあと、健太郎は昭の母親が入院している病院へ行ってみることにした。新吾や武雄は誘わなかった。なんとなく自分一人で行ったほうがいいような気がした。怪我の程度もわからない相手を見舞うことへの遠慮もあった。 […]

なお、この星の上に(29)

14  朝、学校へ行く途中で、誰かが火事の話をしていた。内藤の家が燃えたという。昭のところだ。健太郎は軽い胸騒ぎを覚えた。詳しい情報を得たかったが、通学路ではそれ以上のことはわからない。朝のひんやりした空気のなかに煙の匂 […]

なお、この星の上に(28)

 煌々と照る月の光で、庭は隅々まで明るかった。地面を這っている小さな虫の姿まで見えそうだ。風のない静かな夜だった。木の葉も草も眠り込んだように動かない。顔を上げると、暗い天空に輝く星たちだけが小さく震えている。  夜中に […]

なお、この星の上に(27)

13   太陽の光が触れるのを感じた。空は端から端まで青い。山の輪郭は鮮明で、近くに生い茂る草木は、葉の一枚一枚が数えられるほどくっきりと見えている。祖父の話を思い出した。何もかもが驚くほどはっきり見える日がある。普段は […]

なお、この星の上に(26)

 大人たちが帰ってしまうと、居間には健太郎と父の二人になった。自室に引っ込むタイミングを逸したこともある。加えて健太郎には、父が自分と話をしたがっている気がした。とくに何を話題にするわけでもない。ただ学校のことなどをとり […]

なお、この星の上に(25)

12  長い時間、男たちは難しい顔をして黙り込んでいた。家のなかはひっそりと静まり返っている。庭の動物たちまで息を潜めているみたいだった。卓を囲んでいるのは、仁多さん、岩男さん、源さん、健太郎の父という山参りのメンバーで […]