ぼく自身のための広告

ぼく自身のための広告(5)

5 本棚……③ 机に向かうと、この本棚を背にする格好になる。家を建てたときに造作家具として備えてもらった。できるだけたくさん収納できるものを、とお願いしたけれど、すぐにいっぱいになっちゃうんだな。棚板を調整することで上下幅を変えられるので、...
ぼく自身のための広告

ぼく自身のための広告(4)

4 本棚……② 三つ並べた本棚の右端には、思想・哲学関係の本が入っている。いちばん場所をとっているのはミシェル・フーコー。単行本に加えて講義集成と思考集成が隊列をなしている。同時代最大の思想家という評価は変わらない。ジル・ドゥルーズの本も、...
ぼく自身のための広告

ぼく自身のための広告(3)

3 本棚……① 今日はぼくの本棚をお見せしよう。机に坐って右手に、同じ本棚を三つ並べ、倒れてこないように金具で壁に固定してある。この本棚には自分のなかで評価の定まった人たちのものが集めてある。そのため全集や著作集など、まとまったものが多い。...
九産大講義

古事記とはどのような書物か|成立・内容・日本文学の原点を読む

日本最古の歴史書『古事記』とはどのような書物なのか。成立の背景や神話の意味、日本文学の原点としての価値を、作家・片山恭一が現代の視点から読み解く。
ぼく自身のための広告

ぼく自身のための広告(2)

2 コーヒー 朝はだいたい6時から7時のあいだに起きて、まず庭で簡単な体操。それから剣道の素振り。これで15分か20分。つづいて朝食の支度。といってもリンゴ、バナナ、キウイフルーツなどを切るくらい。ぼくも家族も朝は果物を少々、あとはヨーグル...
ぼく自身のための広告

ぼく自身のための広告(1)

1 机の上 ぼくが仕事をしている机の上はこんな感じ。ご覧の通り、なんの変哲もない。ただごちゃごちゃといろんなものが乗っかっているだけである。つまんない。まあ、仕事をするところだからね。面白おかしくなくてもいいのだ。 この机は、いまから十数年...
ネコふんじゃった

36 生まれたときから、ずっと名盤

このアルバムを最初に聴いたのは高校二年生の冬、友だちのY君の家だった。部屋の隅では、石油ストーブが燃えていた。ちょっとお腹が減ったので、Y君がゆで卵をつくってくれた。コーヒーを淹れて準備完了。レコードに針を下ろす、一曲目の「愛のゆくえ」がは...
The Road To Singurality

The Road To Singularity ~未知の世界を生きる(Ep.7)

7 星空に抱かれて 午後11時にボブと一緒に星を見に行く。さすがに外は真っ暗だ。ロッジを出たときには、「なんだ、こんなものか」と思った。この程度の星空なら日本でも何度か見ている。だが一分ほど経って、暗闇に目が慣れてくると腰を抜かしそうになっ...
The Road To Singurality

The Road To Singularity ~未知の世界を生きる(Ep.6)

6 善なるものの宿るところ 今夜は飲みに行こう、とやさしい言葉をかけてくれた師匠であったが、夕食を済ませると早々に写真を撮りに行ってしまった。まあ、ぼくだってそんなにいつまでもめそめそしていない。立ち直りの早い二人である。 夕食はロッジのレ...
ネコふんじゃった

35 アイズレーが歩んできたロング&ワインディングな道

最初に一言。彼らの場合、ジャケットには目をつぶらなければならない。どのアルバムも、ド派手なステージ衣装に身を固めた六人のあまり美しくない男たちが、「8時だヨ!全員集合」という感じで写っている。同じパターンが「これでもか」というくらいつづく。...
The Road To Singurality

The Road To Singularity ~未知の世界を生きる(Ep.5)

5 青年はマウント・レーニアをめざす ボブの運転する日産のレンタカーは一路、つぎの目的地をめざして走っている。昨夜の宿はシアトル郊外ベルヴュー(Bellevue)のホテルだった。今夜はマウント・レーニア国立公園(Mt.Rainier Nat...
The Road To Singurality

The Road To Singularity ~未知の世界を生きる(Ep.4)

4 レジのないコンビニで買い物をする 坂垣巴留さんのコミック『BEASTARS』は動物たちを主人公とした学園ドラマである。中高一貫全寮制の学園では肉食獣と草食獣が危うい共存関係を保っている。あるときオスのアルパカが何者かに殺害される。喰われ...
The Road To Singurality

The Road To Singularity ~未知の世界を生きる(Ep.3)

3 犬を連れて働く人たち 午前十一時半、シアトルは曇りだ。寝不足の頭と重いスーツケースを抱え、ぼくたちはシャトルバスでレンタカーセンターへ向かう。アメリカの空港はこんなふうにターミナルから少し離れたところにセンターがあって、エイヴィスやバジ...
ネコふんじゃった

34 水割りの味とトム・ウェイツ

若いころは、ウィスキーの水割りを美味しいと思ったことはなかった。ああいうのは結婚式などで、時間つぶしに飲むものだった。最近は、焼酎でもウィスキーでも、お湯や水で薄く割ったものを好んで飲んでいる。歳のせいでしょうかねえ。 水割りの味をおぼえた...
The Road To Singurality

The Road To Singularity ~未知の世界を生きる(Ep.2)

2 いざ、シアトルへ このところボブは、なんでもシンギュラリティにしてしまう。美味しいカレーを食べると、「おお、シンギュラリティ!」なんて叫ぶし、ボストン美術館にあるポール・ゴーギャンの絵も、彼に言わせるとシンギュラリティなのだそうだ。「人...
ネコふんじゃった

33 いつもクールなデスモンドのサックス

ポール・デスモンドというと、条件反射的に「テイク・ファイブ」の人ということになってしまうのは、致し方ないことかもしれない。彼の名前は知らなくても、あのメロディを耳にすれば、大半の人が「ああ、この曲か」となるはずである。ちなみに初演は、デイブ...
The Road To Singurality

The Road To Singularity ~未知の世界を生きる(Ep.1)

1 新しい世界宗教 新しい宗教が生まれつつある。その名を「シンギュラリティ」という。ええっ! シンギュラリティって宗教なのか? その通り。シンギュラリティは21世紀の新しい宗教です。しかも70億を超える人類すべてを帰依させる力をもった、いま...
講演原稿

人間創生としてのシンギュラリティ

1 人間vs人工知能 AIにかんする議論を見ていて感じるのは、この世界がどこに向かっているのか、誰にもわからなくなっているということです。非常に大きな変動が起こっていることは間違いなのですが、世界規模で進行する変化の速さに多くの人がついてい...
片山恭一の文学ノート

小説のために(第二十五話)

15宮沢賢治が詩や童話で使っている用語や比喩(隠喩)が独特であることは、吉本隆明をはじめとして多くの人が指摘している。水でも川でも石でも雲や風や森や木の芽でも、賢治の言葉を通過することで固いものは柔らかくふくらみ、液状のものや気体状のものに...
片山恭一の文学ノート

小説のために(第二十四話)

142016年7月に相模原市の障害者施設で起こった殺傷事件をおぼえておられるだろうか。事件から一年が経って、被害者の父親の一人が新聞のインタビューに応じた。亡くなった娘さんは35歳で、残されたお父さんは取材当時62歳ということだった。その年...
ネコふんじゃった

32 中学生がもらった一枚のはがき

中学三年生の夏休みに、街のレコード屋さんから一枚のはがきが届いた。裏側に写真が印刷されていて、ストリート・ギャングみたいな柄の悪いお兄さんたちがこっちを睨んでいる。なんなんだ、この人たちは。 それはレコード会社が作ったプロモーション用のはが...
片山恭一の文学ノート

小説のために(第二十三話)

13かつての宗教や宗派の対立や争いは、いまの言葉でいうと科学的な信をめぐるものがたくさんあったように思う。地球は動いていると主張するのにも、命を懸けなければならない時代があった。現在では科学的な信の問題として決着がついている。仮に天動説を主...
ネコふんじゃった

31 クラシック音楽との出会い

中学生のころは、よくラジオを聴きながら勉強していた。そこで耳にして、好きになった曲もたくさんある。デオダードの「ラプソディ・イン・ブルー」も、そんな曲の一つだ。 原曲はガーシュインのピアノ協奏曲。夢見るような美しいメロディが気に入ったぼくは...
片山恭一の文学ノート

小説のために(第二十二話)

12葛飾北斎の有名な「冨嶽三十六景・神奈川沖浪裏」を見ていると、絵師がどこにいるのかわからなくなる。小舟に襲いかかる大波は、さながら水木しげるの描く妖怪のようだ。宙を舞う水飛沫は細かく砕かれた氷の塊といったところ。彼はどこにいるのだろう。ど...
ネコふんじゃった

30 二人は別れてしまったけれど

イギリスのフォーク・ロック・バンド、フェアポート・コンヴェンションの中心メンバーだったリチャード・トンプソンが、バンドを脱退した後に奥さんのリンダと結成した夫婦デュオの、これはラスト・アルバムにして最高傑作。 リチャードの個性的なギター・プ...
片山恭一の文学ノート

小説のために(第二十一話)

11北朝鮮の危機を煽って、いらない武器をたくさん購入させる。癌は怖い病気ですからと早期発見・早期治療を啓発し、癌が見つかれば抗癌剤を投与する。高血圧やピロリ菌のリスクを訴えて、降圧剤を処方したり除菌を勧めたりする。同じことだと思う。軍事費は...
片山恭一の文学ノート

小説のために(第二十話)

10ぼくたちはなぜ犬を飼ったり、猫をかわいがったりするのだろう。シアトルのあるアマゾン本社では、従業員は犬を連れて出勤することができるらしい。家に置いてきた飼い犬が気になって仕事に集中できないようでは困るということだろうか。ペットがそばにい...
片山恭一の文学ノート

小説のために(第十九話)

9この宮沢賢治論も終盤に近づき、いよいよラストスパートというところで奈良へ行くことになった。前から入っていた仕事なので仕方がない。ついでに福井まで足を伸ばして5日間ほど中断。頭は宮沢賢治でホットな状態にあるから、四天王を安置しているお堂に行...
ネコふんじゃった

29 ヴァン・モリソンに駄作はない

たぶん、ないと思う。そういうことにしておこう。駄作はない、と断言できないのは、三十枚以上出ている彼のアルバムを、すべて聴いたわけではないから。でも、半分くらいは聴いている。それで言えることは、どのアルバムも、やりたいこと、歌いたいことがはっ...
片山恭一の文学ノート

小説のために(第十八話)

8気功の先生によると、男の胸におっぱいがあるのは、男が女の身体を借りている証拠なんだって。言われてみればそうかも。無駄といえば無駄だし、過去も現在も未来も使い道はなさそうだ。ぼくたち男はお風呂に入るたびに自分の胸を見て、「どうも、お邪魔して...
片山恭一の文学ノート

小説のために(第十七話)

7『聖書』のなかでイエスは、「我よりも父または母を愛する者は、我に相応しからず。我よりも息子または娘を愛する者は、我に相応しからず」(「マタイ伝」10.37)と言っている。困ったことを言う人だなあ。家族よりも信仰を優先させるというのは、どん...
片山恭一の文学ノート

小説のために(第十六話)

6しばらく前にブレディみかこさんの『ヨーロッパ・コーリング』(岩波書店)という本を読んだ。この本、タイトルはクラッシュですよね。それからカバーの写真が、バンクシーのグラフィティ「花を投ずるテロリスト」なんだ。かっこいい! 岩波にもセンスのい...
ネコふんじゃった

28 ジョン・セバスチャンは、たんぽぽみたいなミュージシャンです

今年は一月が暖かく、このまま春になったのではありがたみがないな、と思っていたら、二月になってようやく寒くなってくれた。北国の人には叱られるかもしれないけれど、やっぱり冬はきちんと寒い方がいい。こちらは立春を過ぎると、風は冷たくても日差しはさ...
往復書簡

往復書簡「歩く浄土」(16)

第十六信・片山恭一様(2018年2月18日)1 第十五信をいただいてからちょうどひと月になります。圧巻の内容でくり返し読みかえしました。よくつづくものだとふしぎですが、対話も五年目になりますね。熊本も今冬はいつもより寒かったのですが、もう春...
往復書簡

往復書簡「歩く浄土」(15)

第十五信・森崎茂様(2018年1月18日)あけましておめでとうございます。今年も元気の出る、音色のいい言葉を紡いでいきたいと思います。どうぞ、よろしくお願いいたします。この往復書簡、去年(2017年)12月6日に森崎さんから第十四信をいただ...
ネコふんじゃった

27 冬の寒い朝に聴きたい、透明感あふれるデュオ

ここ福岡では、雪が積もることは一年に一度あるかないか、氷が張るなんて事態は、もう何年も記憶にありません。やはり温暖化の影響でしょうか。ぼくが小学生のころには、郷里の四国でも、冬になるとよく氷が張っていました。池や水溜りに張った氷を割りながら...
片山恭一の文学ノート

小説のために(第十五話)

5いかなる生けるものでも苦しんでいる限り、自分らは完全に幸福とはなりえないと感じる。修行者ほどの徹底性はないにしても、これは誰のなかにも多かれ少なかれある感覚だろう。状況にもよるけれど、いくらか気持ちに余裕のあるときは自然とそんなことを思う...
片山恭一の文学ノート

小説のために(第十四話)

4宮沢賢治の「食」にかんするナイーブさについては、すでに語り尽くされた観がある。通常、それは「慈悲」のような仏教的な倫理観から解釈される。「性」にかんしても同じである。賢治には「生涯のうち、精液を体外に出したことがない者は、自分を含めて世界...
片山恭一の文学ノート

小説のために(第十三話)

3解剖学者の三木成夫さんは、「原初の細胞ができてから後の、今日までの三十数億年の長い進化の過程を、なにか幻のごとく再現する、まことに不思議な世界」が「胎児の世界」であるとおっしゃっている(『生命とリズム』)。三十数億年! そんな長大な歴史を...
片山恭一の文学ノート

小説のために(第十二話)

2少年は汽車に乗ってやってきた。ここは寂しい町の駅だ。客馬車が停まっている。少年は一人でとぼとぼと歩きはじめる。道のりは遠い。畑を通り、丘の裾を抜けて歩いていく。雲雀が鳴いている。ようやく農場の入口にたどり着く。看板が立っている。〔小岩井農...