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AIと恋・アイ

1  人間vs人工知能。この対立の構図自体は新しいものではありません。スタンリー・キューブリック監督の映画『2001年宇宙の旅』(1968年公開)では、宇宙船に搭載されたコンピュータ(HAL9000)が異常をきたし、自分を停止させようとする...
往復書簡

往復書簡『歩く浄土』(14)

第十四信・片山恭一様(2017年12月6日)  戦後の総敗北ということを、サイトの記事でも片山さんとの往復書簡でも取りあげ、しばらく考えてきました。その総仕上げとも言える柄谷行人の「憲法9条の存在意義 ルーツは『徳川の平和』」(毎日新聞20...
ネコふんじゃった

26 あのころは毎日のように、ビリーの歌が聞こえていた

あのころというのは、一九七七年から七八年ごろのこと。たとえば友だちの下宿やアパートを訪れる。するとFMラジオか何かから、『はぐれ刑事純情派』みたいな口笛が流れてくる。そしてはじまる「ストレンジャー」。もういい加減にしてくれ! と思うころには...
往復書簡

往復書簡『歩く浄土』(13)

第十三信・森崎茂様(2017年11月23日) 11月はじめにアメリカのトランプ大統領が来日して、6日に安倍首相と会談しました。翌日の新聞に共同会見の内容が出ていましたが、そのなかで安倍首相は北朝鮮問題について「今後取るべき方策について、完全...
往復書簡

往復書簡『歩く浄土』(12)

第十二信・片山恭一様(2017年11月4日)  この往復書簡も第十二信となります。これまで4年近く片山さんと集中した討論をやってきて、言葉が噛み合うようになったという感じをもっています。ぼくたちが討論していることは、これまでだれも考えたこと...
ネコふんじゃった

25 冬の夜は暖かい部屋でウィリー・ネルソンを聴こう

カントリーの人である。カントリー・ミュージックというのは日本の民謡みたいなもので、ぼくのような者にはみんな同じに聞こえる。だから、どうしても敬遠してしまう。このアルバムは、あまりカントリーっぽくない。誰でも安心して(?)聴ける、大人の音楽に...
往復書簡

往復書簡『歩く浄土』(11)

第十一信・森崎茂様(2017年10月26日)  いまの時代を象徴するものとして、あらためてスマホを取り上げます。前回の書簡で触れた、一心にスマホをする若い人たちについて、森崎さんは「ああ、かれらはかつてのおれだ」という引き寄せ方をしておられ...
往復書簡

往復書簡『歩く浄土』(10)

第十信・片山恭一様(2017年10月15日)  片山さんから第9信をいただき読み始めて、すぐにハッと胸を衝かれたことがあったので、そこから往復書簡の第10信を書きます。皆が一心にスマホに没入することと北朝鮮危機に便乗することは同じことではな...
往復書簡

往復書簡『歩く浄土』(9)

第九信・森崎茂様(2017年10月12日)  やはり最初に、2017年10月22日に投票がおこなわれる衆議院選挙について触れないわけにはいきませんね。森崎さんも10月8日付けのブログ(「歩く浄土」201)で、「いずれの政党も支持しない」と態...
ネコふんじゃった

24 ジョージ・マーティンのちょっといい仕事

「名前のない馬」の大ヒットで華々しいデビューを飾ったアメリカの、これは四枚目のアルバム(一九七四年発表)。本作から、ビートルズの育ての親であるジョージ・マーティンをプロデューサーに迎える。さわやかなアコースティック・サウンドが売り物だった三...
講演原稿

さまざまな自然

コペルニクスやガリレオが登場する以前は、地球のまわりを太陽や月といった天体がまわっていると考えられていました。それが当時の人たちにとっての自然でした。ぼくたちは地球が自転しながら太陽のまわりをまわっていることを知っています。現在ではそっちの...
往復書簡

往復書簡『歩く浄土』(8)

第八信・片山恭一様(2017年9月24日)  わたしたちの思考の慣性は自己意識の用語法を観念の自然としている。この自然はわたしたちの存在を自己と対関係や家族と社会関係に類別します。この表現の全体をわたしは意識の外延表現と呼んできました。歴史...
往復書簡

往復書簡『歩く浄土』(7)

第七信・森崎茂様(2017年9月20日)  メキシコから一週間ぶりに帰ってくると、メディアは民進党の女性議員の不倫問題と皇室の娘さんの婚約発表で沸き立っていて、なんだ、なんだ、この国はいったいどうなっているんだ、とにわかに状況に順応できない...
往復書簡

往復書簡『歩く浄土』(6)

第六信・片山恭一様(2017年9月12日) 1  ポール・ゴーギャンが19世紀に描いた「われわれはどこから来たのか われわれは何者か われわれはどこへ行くのか」とタイトルがつけられた絵があります。イスラエル人の歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリ...
ネコふんじゃった

23 秋にはJTのアルバムを一枚ずつ聴いてみる

最初に買ったジェイムス・テイラーのアルバムが、この『ワン・マン・ドッグ』だった。中学三年生の秋である。ビートルズが設立したアップル・レコードからデビューするものの、セールス的には振るわず、新たにワーナー・ブラザーズと契約を交わして再デビュー...
往復書簡

往復書簡『歩く浄土』(5)

第五信・森崎茂様(2017年9月7日)  メキシコに行ってまいりました。いや~、楽しかったなあ。三日間、シティの中心部をうろうろしていただけなので麻薬カルテルの影はなし、危険な目に遭うこともなく、ひたすらリベラ、シケイロス、オロスコなどの絵...
往復書簡

往復書簡『歩く浄土』(4)

第四信・片山恭一様(2017年9月6日)  メキシコはどうでしたか。ドン・ウンィズロウの『犬の力』や『ザ・カルテル』の雰囲気はありましたか。第三信の結びで片山さんは「いかに人間の未来を思い描くかによって、来るべき世界はユートピアにもなればデ...
往復書簡

往復書簡『歩く浄土』(3)

第三信・森崎茂様(2017年8月30日)  さっそく返信をいただき、ありがとうございます。第二信の最後で言及されていた、俗と非俗のあいだのわずかな隙間ということ、とても微妙で難解ですが、大切なところですね。このわずかな隙間から、アーレントの...
往復書簡

往復書簡『歩く浄土』(2)

第二信・片山恭一様(2017年8月27日)  2017年8月18日に片山さんと熊本で話をしたとき、お互いの言葉もこなれてきたので、往復書簡をやりませんかと呼びかけ、その第一信が送られてきた。定期的に熊本と福岡を往復しながら対話を持続してきて...
往復書簡

往復書簡『歩く浄土』(1)

第一信・森崎茂様(2017年8月24日)  往復書簡をはじめるにあたり、これまでの流れを少し整理してみたいと思います。ぼくたちの対話も四年目に入り、当初にくらべると、ずいぶん見通しがよくなったことを実感しています。すでに何度か触れたように、...
ネコふんじゃった

22 サンプラー盤を買っていたころ

中学三年生のときのオイルショックで、それまで二千円だったLPレコードが二千五百円になった。おこずかいは月に二千円だったので、五百円の値上げは痛かった。欲しいレコードはたくさんあるのに……。  そのころ幾つかのレコード会社がサンプラー盤という...
講演原稿

文学のことば・文学のまなざし

日本では去年(2016年)7月、神奈川県の知的障害者福祉施設に元職員の男が侵入して、刃物で19人を刺殺、26人に重軽傷を負わせるという事件が起きました。事件から一年が経ち、被害者の父親の一人がインタビューに応じたものが新聞に出ていました。亡...
ネコふんじゃった

21 夏休みに離島で聴いたジョージ・ベンソン

大学生になって夏休みに帰省すると、高校時代の友だちとよくキャンプに行った。郷里の街は海に面しており、船で行けるキャンプ場が何箇所かあった。その年はY君と二人で日振島というところへ行くことにした。高速艇で一時間くらいの、かなり本格的な離島であ...
医学の常識・非常識

医学の常識・非常識(1)

(1)がん検診をめぐる常識・非常識 【前立腺がん】 ・アメリカで実施された比較試験(約8万人の男子が対象)では、無検査・放置群とPSA(前立腺特異抗原)検診とを比べた結果、検診群の前立腺がん死亡数は減らなかった。(JNCI 2012;104...
ネコふんじゃった

20 世界仕様、日本のロックの金字塔

大学院に進学して間もないころ、ロック好きの先輩が、「これ聴かんと後悔するばい」と言って、一枚のレコードを貸してくれた。針を落としてから最後の曲が終わるまでの四十分間。打ちのめされた。とくに「マラッカ」と「つれなのふりや」と「裸にされた街」の...
緊急討議

『歩く浄土』Live in KUMAMOTO 2017.5.26 (Part2)

片山 すると安倍晋三的なものは出てくるべくして出てきた、いま起こっているデタラメは起こるべくして起こっているということですね。 森崎 そうだと思います。「それはめでたいことで」という皇室報道と、やりたい放題の安倍晋三の迷妄が、分離不能の一対...
緊急討議

『歩く浄土』Live in KUMAMOTO 2017.5.26(Part 1)

森崎 この国のあり方は数年で臨界を越えて急速に変質したように見えます。なぜだ、という思いは誰の胸のうちにもあると思うんです。特別機密保護法から安保法制(戦争法)を経て共謀罪へ、戦後民主主義と呼ばれてきたものが一気に瓦解してしまった。多くの人...
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弔辞

濱崎君、まさかこんなに早くお別れの言葉を述べる日が来るとは思ってもみませんでした。日記を見ると、ちょうと一年前に最初の知らせを受けています。長く医者をやってきた君らしく、膵臓癌のステージⅣbだとあっさり明かしてくれました。肝臓と肺に転移があ...
ネコふんじゃった

19 今年は三十一回忌

「夏の日の恋」でおなじみのパーシー・フェイス。ジャンルでいうとムード・ミュージックやイージー・リスニングといったくくりになるかと思う。しかしヨーロッパ音楽からはじまり、ミュージカル、ラテン、映画音楽、さらに晩年にはキーボードやコーラスを大々...
ネコふんじゃった

18 ベスト盤についての一考察

レコードからCDになって、ベスト盤がつまらなくなった、と感じているのは私だけだろうか。かつてLPの時代には、ベスト盤の名盤がたくさんあった。サイモン&ガーファンクルの『グレイテスト・ヒッツ』やジョン・レノンの『シェイヴド・フィッシュ』は、ア...
緊急討議

『歩く浄土』 Live in FUKUOKA 2017.4.14 (Part 5)

5 圧倒的な善として人間ははじまった 片山 森崎さんはブログのなかで繰り返し、「おのずからなる善」「おのずからなる絶対的な善」ということを言っておられます。わかりやすい例をあげると、先ほども触れた映画『タイタニック』のなかで、恋人のローズを...
緊急討議

『歩く浄土』 Live in FUKUOKA 2017.4.14 (Part 4)

4 総表現者としての生 片山 グローバリゼーションによって国家や文化や伝統といった保護膜が破壊され、誰もが一個の生存として剥き出しにされる。一人ひとりの個体差が個体差として、いかなる配慮も酌量もされることなく、それ自体として客観的に評価され...
緊急討議

『歩く浄土』Live in FUKUOKA 2017.4.14 (Part 3)

3 総アスリートという自然 片山 以前に森崎さんが、現在の世界のありようを「総アスリート化」という言い方で粗視化されたことがあって、ぼくたちのあいだではすっかり定着した言いまわしになっているのですが、確認の意味で初出の森崎さんの発言部分を引...
緊急討議

『歩く浄土』Live in FUKUOKA 2017.4.14 (Part 2)

2 国家を私的に運用する 片山 トランプが手続きなしに、いきなりシリアを空爆した。実際にどういう経緯だったのか、いろんな情報が錯綜していて真相はわかりません。新聞やネットで手に入れることのできる情報をもとに、できるだけ本質的なところをつかみ...
緊急討議

『歩く浄土』 Live in FUKUOKA 2017.4.14 (Part 1)

はじめに  これまでに四回を数える私たちの連続討議は、電子出版ながらそれぞれ一冊の本として読んでもらうことを意図している。具体的には、森崎茂さんと継続して話をしていくなかで、少しまとまったテーマが見えてきたころに、その間、森崎さんが書かれた...
九産大講義

総表現者宣言~新年度の開講にあたって

講義をはじめるにあたり、ぼくなりの講義のモチーフといいますが、今年は皆さんと一緒にこういうことを考えてみたい、ということをお話ししたいと思います。  いまはどういう時代か、というところから入っていきます。言うまでもなく大変な時代ですね。この...
ネコふんじゃった

17 世界でいちばん美しいCD

アルゾ。本名アルフレッド・アフランティ。ニューヨーク生まれの彼は、十代のころからグリニッジ・ヴィレッジのカフェなどで音楽的なキャリアを積んでいく。様々な困難を乗り越えて、ようやくデビュー・アルバムの発売にこぎつけたのが一九七二年のこと。しか...
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フィクションの可能性

いつの時代にも、その時代に固有の「自然」がある。ユヴァル・ノア・ハラリの『サピエンス全史』によると、紀元前1776年ごろに制定されたハンムラビ法典では、人は生まれながらに三つの階級(上層自由人、一般自由人、奴隷)に分けられていた。それぞれの...
ネコふんじゃった

16 カットアウト盤を探し歩いた日々

いまの人たちには馴染みがないかもしれないが、以前はカットアウト盤といって、廃盤などになったレコードをわざと傷つけ、ディスカウント商品として流通させる仕組みがあった。その名のとおり、ジャケットの片隅が少し切り取られている。なかには切れ込みを入...
ネコふんじゃった

15 プロレスラーじゃありません

深夜、人気のない裏通りでけっして出会いたくないミュージシャン、それがアーロン・ネヴィルだ。不幸にして出会ってしまったら、目を合わさないようにして、できるだけ素早く通り過ぎてしまいたい相手、それがアーロン・ネヴィルだ。いくらにっこり笑いかけて...