ぼく自身のための広告(8)

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8 お酒の話

 どうもお酒が好きで、困っちゃうなあ。別に困ることはないんだけど、つい飲み過ぎてしまうもので。なぜかなあ。年が明けると60歳なのに。還暦ですよ、いやはや。こういうことって学ばないものです。学習したことを忘れちゃうんだよね、お酒を飲むと。「今日は飲み過ぎないぞ」と心に誓っても、いざ飲みはじめると「まあ、いいか。朋、遠方より来る。楽しい宵じゃないか。愉快、愉快……」と、つい飲み過ぎてしまう。
 さすがに若いころのように無茶な飲み方はしなくなった。適量を過ごす、という程度である。ぼくの場合、適量とは日本酒、ワインなら2合、焼酎なら1合ってところかな。このくらいならいい気分で、ほとんど酔っぱらわない。日によって2合が3合、1合が1合半になっても、まあ大丈夫。それ以上、同じ種類のお酒を飲むことはまずない。ところが、である。
 うちは奥さんに次男が同居している。ぼくを含めて3人ともいける口なので、週末などはワインを開けようかということになり、3人でボトルを1本半から2本くらい。ここまでは適量である。しかし、これで済まないことがある。ぼくだけ一人でいい気分になってウイスキーを飲みはじめる。これがいけないんだなあ。ショットグラスで1杯が2杯になって、聴いている音楽のヴォリュームはどんどん大きくなって、最後は何杯飲んだかよくおぼえていない。
 ウイスキーって、いま安いでしょう? スコッチもシングルモルトはそこそこのお値段だけど、カティーサークとかホワイトホースとか、ブレンディドのものは千円ほどである。学生のころはなかなか飲めなかった。それがスーパーのお酒コーナーで寂しそうに棚に並んでいる。放っておけるだろうか?
「大丈夫、きみを一人にしないよ」
 で、連れて帰る。二人でも2000円だしね。大瀧詠一さんの初期の曲に「あつさのせい」ってあるけど、ぼくの場合はさしずめ「やすさのせい」だな、はっはっはっ。
 笑いごとではない。今日、ここで読者のみなさんに誓います。ウイスキーはしばらく買いません。しばらくは……ね。
 だがしかし、安いのはウイスキーだけではない。普段、家で飲むのは主に芋焼酎だが、ぼくが好んで飲む屋久島の「三岳」は一升が2500円くらい。これは高いほうで、だいたい1500円も出せば鹿児島や宮崎の美味しい芋焼酎がたくさんある。
 安いから飲み過ぎるのかって、そうです。まあ聞いてください。最近はアマゾンでワインを買うことが多いけれど、チリはもとよりカリフォルニア、南アフリカあたりの美味しいワインが1000円前後で購入できる。たいてい5本か6本がセットになっている。たまにはボルドーも買ったりする。結果的にわが家には常時、1ダースほどのワインがストックされていることになる。
 さらに、である。ぼくはお菓子を食べないので、仕事などで旅に出た場合、国内でも海外でも、お土産はたいていお酒ってことになる。国内の場合は日本酒ですね。美味しそうなものを4合瓶で2本ほど買って帰る。
 まとめてみよう。ウイスキー、ワイン、日本酒、あわせると軽く20本くらいになる。忘れちゃいけない、南九州出身の芋焼酎もふくよかな一升瓶で控えている。これらが毎晩、「わたしを飲んでぇ」と目くばせするのである。困っちゃうなあ。お酒にかんして、わが家はハーレム、ぼくは平安時代の天皇みたいなもんですわ。わっはっは、愉快、愉快。
 ……馬鹿である。こんな話に、みなさまを長々とお付き合いさせるわけにはいかない。おっ、そろそろ日も暮れてきた。今夜も美味しいお酒を飲もうかな……。