猫が死んだ

 猫が死んだ。ぼくのかわいい猫が死んでしまった。心臓の鼓動が弱くなり、ゆっくりと間遠になっていき、ひとつ大きく息をすると止まってしまった。自分で最期の場所と定めた寝室のソファの下から、猫は真っ黒い大きな目でぼくを見つめた […]

4 春には花の苗を植えて

 今年の冬は寒さが厳しく、雪もたくさん降ったりして、なかなか手ごわかった。梅も水仙も、例年にくらべて開花が遅れているとか。でも三月を過ぎると、さすがに暖かい日も増えてくる。朝六時ごろに起きてカーテンをあける。東の空が白っ […]

なお、この星の上に(4)

 山の棚田を過ぎると、それまでの砂利道から土だけの道になった。まわりの木々の様子も、明るい雑木林から、植林された杉や檜の林に変わっていく。針葉樹が生い茂った林は暗く、その横を通る道までがひんやりとしている。清水が湧き出し […]

小説のために(第三話)

 ぼくたちは自分の内在的な本質によって自分になっているわけではない。自分探しなどというのは、地中に果てしなく穴を掘りつづけるようなものだ。最初から無意味であることはわかりきっている。自分を探すのではなく、他者を探さなくて […]

ご挨拶

 このたびオフィシャル・サイトを開設いたしました。以前に『片山恭一書店』というサイトをやっていましたが、こちらは運営会社を経由したものなので不如意なことも多く、長く開店休業の状態にあります。こうした状況を見かねて、ぼくの […]

なお、この星の上に(3)

 いつのまにか竹林のところまで来ていた。そろそろウグイスが鳴きはじめるころだが、林のなかは静まり返っている。竹林の横は柿畑だった。これらの柿は出荷用で、実を採りやすいように、大人が手を伸ばせば届くくらいの高さに揃えて剪定 […]