11 セピア色のビーチ・ボーイズ

ネコふんじゃった
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 手ごわいバンドである。なかなか一筋縄ではいかない。三十枚近いオリジナル・アルバムのなかに、駄作は一枚もない。どのアルバムにも、ちゃんと聴きどころがある。このアルバムは十五枚目だから、ちょうと折り返しということになる。デビューから六年、セールス的にはどん底の時期だったらしい。
 一作ごとに進化しながら、『ペット・サウンド』にまで登りつめていく全盛期の勢いは、たしかにない。サーフィン、ホットロッド……といった初期のわかりやすいイメージも、すでに過去のものとなっている。でも夏が終わり、太陽の光の色が変わり、浜辺にも秋の気配が漂いはじめるころ、ぼくはこのアルバムが無性に聴きたくなる。
 とにかく各楽曲のクオリティが高い。地味だけれど、味わい深い曲が並んでいる。全体にくすんだ色調、穏やかで、落ち着いたサウンド、バンド名がビーチ・ボーイズなのは困ったものだけど、一皮剥けて大人になった音である。これまで天才の兄・ブライアンの陰に隠れていた次男坊・デニスが才能を発揮しはじめたのも、このアルバムから。他のメンバーもそれなりに頑張って、タイトルが『フレンズ』。いいなあ。
 ビーチ・ボーイズの一連の作品として聴くよりも、これだけ取り出して、たとえばサークルの『ネオン』やハーパース・ビザールの『シークレット・ライフ』のような同時代のアルバムと並べて聴いた方が、良さがわかるかもしれない。この時期の彼らのアルバムでは、『サンフラワー』もオススメです。(2006年11月)