アルゾ。本名アルフレッド・アフランティ。ニューヨーク生まれの彼は、十代のころからグリニッジ・ヴィレッジのカフェなどで音楽的なキャリアを積んでいく。様々な困難を乗り越えて、ようやくデビュー・アルバムの発売にこぎつけたのが一九七二年のこと。しかし契約していたレコード会社が倒産し、すでに完成していたセカンド・アルバムもお蔵入りとなる。その後も不運が重なった彼は、失意のうちに音楽の世界から身を引いてしまう。
アルゾの音楽を愛しつづけ、アルバムをCD化するために腐心していたのは、心ある日本のリスナーたちだった。そのことを知った彼は、コンピュータに自分の名前を打ち込んでみる。すると様々なサイトがヒットした。どうやら日本でアルゾは「有名」らしい。自分の音楽について誰かが知っていて、消息を気にかけてくれているなんて、夢にも思わなかったのに……。
こうしてアルゾと日本のリスナーたちとのあいだの、刺激的で心温まる交流がはじまる。三十年のブランクを取り戻すかのように話は進み、このデビュー・アルバムにつづき、幻のセカンド・アルバムが世界ではじめてリリースされることになる。その矢先、彼は心臓発作で急死してしまう。享年五六歳。来日してライブを行う計画まであったという。
あまりにも儚いアルゾのデビュー・アルバム。リイシューされるまでの経緯も含めて、世界でいちばん美しいCDだと思う。この素晴らしい音楽が、どうか多くの人たちの耳に届きますように。(2006年5月)
17 世界でいちばん美しいCD
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