レゲエを聴きはじめた七〇年代の後半、ボブ・マーリーやジミー・クリフとともに、ぼくがいちばん好きになったバンドの一つが、このサード・ワールドだった。
レゲエのグループの多くは、いわゆるヴォーカル・グループで、演奏も自前でこなすというバンドは意外に少ない。それぞれのスタジオにハウス・バンドがいて、演奏は彼らが受け持つという場合がほとんどだ。ソウルなどの制作システムと同じである。
サード・ワールドは六人のメンバーで、歌と演奏とコーラスをやってしまう。しかも演奏能力は非常に高い。かなり複雑なハーモニーも見事にこなす。当時のジャマイカのバンドとしては、飛び抜けて洗練された音を出していた。
このアルバムは三作目で、彼らの音楽的な到達点と言っていいだろう。アメリカのソウルを意識した明るく洗練された音と、ジャマイカのルーツ・レゲエの香りが絶妙なバランスでブレンドされ、全曲を通して気持ちよく聴ける。キーボードやシンセサイザーを多用したプログレッシブなアレンジも、ここではまだ効果的だ。つぎのアルバムくらいからは、メンバーたちの器用さが祟り、ポップ・レゲエの路線に走って、どんどんつまらなくなってしまう。
サード・ワールドは三枚目まで、というのがぼくの個人的な意見だ。ジャケットも三枚目までは同じ画家の絵が使われており、ストーリーとして連続性がもたせてある。素朴な温かみのある魅力的なジャケットだと思う。(2012年5月)