フランク・ザッパというと奇人変人のイメージが先行して、とくに日本では、彼の音楽が正当に評価されていない気がする。しかしアルバムを聴いてもらえばわかるとおり、非常に高い音楽性をもった、天才的なミュージシャンである。
あまりに才能があり過ぎるため、ザッパの生み出す音楽がバラエティに富んでいるのは事実だ。ロック、ジャズ、ソウル、クラシック、現代音楽……ほとんどのジャンルをカバーしていると言っていい。そのことが「難解」と誤解される要因にもなっている。つまりザッパの難解さは、音楽そのものの難しさ、わけのわからなさというよりは、いろんな要素が複雑に絡み合っていることからくるものなのだ。しかし彼の音楽の本質は、あくまでも楽しさとかっこよさ、それに美しさにあると思う。
このアルバムは、数多いザッパの作品のなかでも、かっこよさにおいて一、二を争うものだろう。また聴きやすいという点においても、とくに彼の音楽にはじめて接する人には、安心してお勧めできる。内容は一言で表現すると、「ジャズ・ロック」ということになるだろうか。ほとんどがインストゥルメンタルで構成され、全編でイアン・アンダーウッドがマルチ・プレイヤーとして活躍、そこにザッパが素晴しいギター・プレイでもって切り込んでいくという展開。胸が躍るとはこのことだ。
その他の作品としては、『フリーク・アウト』『ワン・サイズ・フィッツ・オール』『シーク・ヤーブティ』などがお勧め。とにかく聴いてみてほしい。(2010年3月)