1969年にデビューしたシカゴのアルバムは、いきなり二枚組で、その後、三作目までずっと二枚組だった。おまけに四作目にあたるカーネギー・ホールでのライブは四枚組というとんでもない代物。たしか当時、国内盤は八千円近くしたと思う。
ぼくが最初に買ったシカゴのレコードは、「クエスチョンズ67/68」のシングル盤で、無数の十字架が並んだ墓地を背景に、軍服姿で七人のメンバーたちが映っているジャケットは、とてもかっこよかった。つぎに『栄光のシカゴ』という来日記念のベスト・アルバムを買った。最初の三作からのセレクトで、選曲といい曲順といい、とても良くできたコンピレーションだった。このアルバムで、すっかり彼らのファンになった。
ギター、ベース、ドラムス、キーボードに三人のブラス・セクションを組み合わせた編成は、当時、ブラッド・スウェッド&ティアーズなどとともに「ブラス・ロック」と呼ばれた。とくにシカゴの場合は、ジャズ的なインプロヴィゼーションを取り入れたり、反戦・リベラルといった政治的メッセージを打ち出したりと、いかにも知的なアメリカの若者という感じだった。
かつて中学生を悩ませた二枚組も、CDの時代になってからはシングル仕様でお手軽に買えるようになった。そうやって彼らの作品を順番に聴き直していくと、やはり初期の三作が圧倒的に素晴らしい。なかでも荒々しさのうちに内省的な空虚さを漂わせた三枚目に、いまはもっとも心を惹かれる。(2010年1月)