ぼくはこんな絵を掛けている……⑥

こんな絵
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 前回ご紹介したアボリジニの青年の版画を、3枚並べて額装してみた。小さな絵も、こんなふうに何枚かまとめて額に入れると、それなりにインパクトのある作品になる。組み合わせや配列を考えたり、額縁を選んだりするのは、アレンジャーやプロデューサーと同じ創造的な行為だ。お金を出して買ったものに、少し自分の創意を加えて「半径10m」をデザインしたいですね。

 オーストラリアでは「ショート・ブラック」はエスプレッソのこと。普通のコーヒーは「ロング・ブラック」というらしい。オージービーフも何度か食べた。とくにプライム・リブ・ステーキというのが美味しかったなあ。トラディショナル・カットという大きめのサイズを、奥さんと二人でシェアして食べるとお腹がいっぱいになったものだ。

 肝心の絵の話をしなくては。アボリジナル社会の重要な宗教的概念に「ドリーミング(Dreaming)」と呼ばれるものがある。天地創造の神話にまつわるもので、「ドリーム」は「夢」という意味ではなく時間的な感覚のようなものらしい。彼らは過去や未来という時間の概念はもっていない。祖先たちの物語は時間を超越しており、天地創造の神話も大昔の出来事ではなく、現在そして未来へとつづくと考えてられている。つまり人々はいまこの瞬間もドリーム・タイムをたどりつづけているのだ。

 アボリジナル・アートには、このようなドリーム・タイムのメッセージを伝えるものが多いという。そんなことを頭に入れて絵を見ると、描かれているトカゲや不思議な動物や樹木など、一つ一つに精霊が宿っているような気がしてくる。(2020.9.21)