4 春には花の苗を植えて

ネコふんじゃった
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 今年の冬は寒さが厳しく、雪もたくさん降ったりして、なかなか手ごわかった。梅も水仙も、例年にくらべて開花が遅れているとか。でも三月を過ぎると、さすがに暖かい日も増えてくる。朝六時ごろに起きてカーテンをあける。東の空が白っぽく明るんでいる。その時間が、少しずつ早くなっていて、季節の進んでいることが実感される。
 この時期、きまって聴きたくなるのが、ロジャー・ニコルズのこのアルバムだ。一曲目のタイトルは「待たせないでおくれ」。ヴァイオリンのピチカートとともに軽快にはじまる。男性のヴォーカリストはかなり文化系だけれど、曲のイメージとアレンジに合っている。途中から女性の声がかぶさってくると、本当に「もう待てない!」という気分になって、春めく街に飛び出して行きたくなる。
 ビートルズやバート・バカラックの秀逸なコピーあり。陰影に富んだニコルズのオリジナルも素晴らしい。それらがバランスよく並んで十二曲、昔のレコードはLPでも三十分ちょっと。短いけれど、お腹はいっぱいだ。すぐれたミュージシャンたちの小さな輪があやなす、魔法のような時間が詰まっている。
 このアルバム、リリースは一九六七年だが、長いあいだ幻の名盤状態で入手が難しかった。ぼくも音楽雑誌などでジャケットとタイトルは知っていたものの、大人になるまで実際の音は聴いたことがなかった。現在はソフトロックの必須アイテムになっているようで、簡単に手に入ると思います。(2006年4月)