宮沢賢治の周辺

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宮沢賢治の周辺(6)

第6話 遠いともだち① 解剖学者の三木成夫さんは、「原初の細胞ができてから後の、今日までの三十数億年の長い進化の過程を、なにか幻のごとく再現する、まことに不思議な世界」が「胎児の世界」であるとおっしゃっている(『生命とリズム』)。三十数億年...
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宮沢賢治の周辺(5)

第5話 「小岩井農場」③ しばらく前の新聞に、シリア北部ラッカ近郊にある「国境なき医師団」支援の病院に派遣されていた看護師が現地の状況を語ったものが載っていた。 ある日の急患は父親と4歳の娘でした。先頭を歩いていたとみられる母親が手術室に来...
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宮沢賢治の周辺(4)

第4話 「小岩井農場」② ユリアがジュラ紀に、ペムペルがペルム紀(二畳紀)に由来する名前だとすると、数億年の視野で考える必要がある。そのくらい遠いともだちなのだ。そこまで遡らないと、「わたくしはこの巨きな旅のなかの一つづりから/血みどろにな...
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宮沢賢治の周辺(3)

第3話 「小岩井農場」① 少年は汽車に乗ってやってきた。ここは寂しい町の駅だ。客馬車が停まっているけれど、彼に「お乗り」と声をかけてくれる大人はいない。少年は一人でとぼとぼと歩きはじめる。道のりは遠い。畑を通り、丘の裾を抜けて歩いていく。雲...
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宮沢賢治の周辺(2)

第2話 「いちねんせい」② 谷川俊太郎の「ぱん」という詩を流れている幸福な音色は、しかし一瞬にして人々の断末魔の声に暗転しうるものだ。食物連鎖といえば聞こえはいいけれど、要するに生存競争である。万物は食べるものと食べられるものに引き裂かれて...
宮沢賢治の周辺

宮沢賢治の周辺(1)

第1話 「いちねんせい」① 前から気になっている谷川俊太郎の詩に「ぱん」という作品がある。1988年に刊行された『いちねんせい』という詩集に入っている。このとき作者は56~57歳。50代半ばで「いちねんせい」。いいなあ。清々しい気持ちで読ん...